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”燃える、燃える・・!”
家が燃えている。
すごい炎熱。木の燃える匂い。
東の家は、江戸時代から続く武士の家なのだ。
武士といっても、代々町同心を幕府から拝命した、幕臣としては下級の部類になってしまうのだが。
すさまじい炎に巻かれて、もはや自分の命は覚悟しないといけないまでになってしまった。
それもこれも、東の家を急襲した”幻魔”によって起こされた火災による。
NYから帰還した弟の丈と、それに同行してきたトランシルバニア王国のルーナ王女、エスパー戦士の黒人少年サンボ、アンドロメダのサイボーグ戦士ベガを狙って。
いや、違う。
いや、違う。
彼らは、私を、この私を守るために、疲労困憊した体を引きずるようにして、長駆NYから飛んで戻ってきたのだ。
NYで暴れている”幻魔”をかろうじて退散させることに成功したが、なんと逃げ出した”幻魔”は、日本、東京、吉祥寺に住む、丈の姉の私に意趣返しをしようと考えたのである。
彼らは、私を守ろうとしてくれたが、いかんせん、”幻魔”たちの方が一枚上手だった。
下水道から現れた無数の溝鼠たちの群れ。それが、吉祥寺の町の中を我が物顔で跋扈し、四方八方から、東の家に集まってくる。
疲れ果てた丈たちの行動が後手後手に回ったことを責められない。
彼らはルーナ王女を家に残し、町の中の溝鼠たちを追い払うのに奔走するはめになり、徐々に東家から引き剥がされていた。
一方、不意に家の中に現れたねずみの大群に、慌てふためいた弟の卓は新聞を丸め松明にして、追い払おうとした。それも、責められない。
そして、家の中に集まったねずみの群れのなかから、ついに”幻魔”たちが正体を現し、合体、恐竜ほどの巨大な溝鼠に変身したのである。
そして、二階の私の部屋で休むことにしていたルーナ王女を捕まえたのだ。
”幻魔”が天井を打ち破ったときに折れた梁が私の上に落ちてきて、その下に挟まってしまったのだ。
同時に、巨大ねずみの尻尾にはじかれた弟の卓は、松明を取り落としてしまった。その火が、燃え広がったのである。
しかし、巨大ねずみ”幻魔”は、その程度の火は物ともしない。
「イッタダキマ~ス」
割れ鐘のような声で、”幻魔”は捕まえたルーナ王女をその尖った口に近づける。
しかし・・.
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