願わくば吉祥寺天女光臨

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「へーん、残念でした!」 「クソ!」  その寸前で、エスパーの黒人少年サンボがお得意のテレポートでルーナ王女を救ったのだ。  「よし、反撃だ!」サイボーグ戦士ベガが、その白い巨体を、しかし滑らかに使って殺到。 「ばかメ!」 ばちん!  だが、”幻魔”の尻尾は、簡単に彼の巨体をはじき返した。 「うぬ!」 ぶうん! そして、 がっ!  その巨体が飛んだ先に、丈がいた。  頭部を強打した丈の割れた額から血が流れ出る。  脳震盪を起こした丈は、気絶こそしなかったが・・・。 「ジョウ、大丈夫か」 「・・だめだ、ベガ、力が、力が抜ける、超能力が、使え、ない」ひざを折った丈がうめいた。 「くくくく・・形勢逆転ダナ、地球ノえすぱー戦士タチヨ。ミンナマトメテ、一呑ミにシテクレル」 「丈ちゃん、逃げなさい!」私は、思わず、声を上げた。 「姉さん!だめだ、サンボ、姉さんを助けてくれ!」 「だめだよ、おいらは、ルーナちゃんを守るので手一杯だ」 「逃げなさい、丈ちゃん、みんな!」 「覚悟シロ!モウ、オ前タチハ我ガ幻術ノ虜!」 「く・・う、動けない」 「だめよ・・丈!」  なんとしてでも、弟の丈たちを護る!  私の心の奥底から、いや、そのもっと底から、”それ”はわきあがってきた。  それは、青い、”浄化の炎”。  悪しき、魔なるもの、不浄なるもの滅してやまない聖なる炎。  それが、私にはわかる。  それが、私の力だったのだ。 「ギョッ」 しかし、”幻魔”がそれに気がついたときには、もう手遅れだった。 あるいは・・  もし、東の家が炎上していなかったら、その前に気づかれてしまったかもしれないが。  おろかな”幻魔”・・そう、”幻魔”は大宇宙を跋扈できるほどの超能力の持ち主だが、根本的に”おろか”なのだ・・は、気づくのが遅れた。炎の中に混じった私の”浄化の火”に。 「ナ、ナニ、コノ女ガ、マサカ!」  私こそ、その”まさか”だったのだ。 ぼおおおお、 うぎゃあああああ!  一瞬で火達磨になった巨大な”幻魔”はたまらず悲鳴を上げた。  普通の炎をものともしなかった”幻魔”もひとたまりもなかった。 ぼああああ!  超能力のバリアーも有らばこそ。  体表だけではない。開いた口、目、耳の穴、尻の穴から青い炎を吹き上げる。  そして、東の家が、”幻魔”とともに炎の柱ととなり、焼け落ちる。 「姉さん、姉さん、だめだ、姉さん」 ”丈ちゃん、丈ちゃん、悲しまないで。そして、姉さんを、忘れないで。姉さんは、いつも、あなたと一緒に、あなたとともにいるわ”  焼け落ちる炎の中で、その三千子の心の声が、丈の耳に、心に、そして魂に届く。 「わああああああああ」  弟の丈の悲痛な叫び声が、炎のカーテンの向こうから聞こえてきた。 そして・・
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