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道化の華
俺は、音楽家の家庭に生まれた
父が現役バイオリンニスト、母は、元ピアニスト
俺を授かった事で母は家庭に入る事を決めた
音楽一家の息子だから奏でると書いて『カナデ』と名付けられた
そんな家庭に生まれたため物心つく前からピアノに触れていた
父は、厳しく褒められた事がほとんどない
母は、厳格な父を恐れビクビクしていた
父がくれる唯一のご褒美がケーキやお菓子だった
ある日、コンクールで優秀賞を取った時に父がご褒美にと買ってくれた
父からお祝いの言葉も品ももらった事がなかったので
父の父らしい姿に感激してひどく喜んだ事を覚えている
その頃、父の中で『子供は、お菓子が喜ぶ』という定義ができた
優秀な成績を残すとケーキやお菓子をくれた
俺は、ケーキやお菓子が欲しかった訳ではなく
父が褒めてくれる事が嬉しくて音楽にのめり込んだ
練習の成果が出てどのコンクールでも表彰されるようになった
一時期、賞を取るのが普通になった時期があった
そんなある日、俺は、コンクールでひどい演奏をした
賞などかすりもしない
無様で滑稽な優等生
父の顔に泥を塗る結果となった
練習のしすぎで腱鞘炎になったいのだ
父に褒められたいが為に隠していた
コンクールの結果に父は激怒して
会場の外で母は、罵倒され
俺は、ひどく罵られた
自分のせいで母がひどい扱いをされた事に自分の弱さに
悔しくなり涙も無意識に流れ始めその場でふせてしまった
まさか、幼い年で複雑で答えのでない感情に襲われるなんて思わなかった
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