お菓子の使い

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お菓子の使い

高校の夏休み いつもは、生徒で賑わう校舎もこの時期は静かになる 窓も開いていないのに鉄合金で作られた校舎はどこかほんのり 冷たさを帯びている 誰かが言っていた 冬の寒さを鉄が蓄積しているのだと 体感温度が外より涼しいだけで真夏の昼間はやはり暑い そんななか靴音がキュッキュッとドリフトする音が聞こえ始める 体育館に近づく度に大きくなる音 この音を聴く度に夏の青春とはことなのかなと 少し浮き足立つ 体育館に繋がる渡り廊下を歩いている途中で バスケ部顧問の声が聞こえてきた 「午前中の練習は、これでおわり!」 「あざした!!」 同じ方向に鳴らしていたドリフト音は、終わり合図とともに 音を変えてバタバタと四方に散らばっていった その中の一つが俺の前で立ち止まる 「イッちゃん!お待たせ!!」 バスケ部にしては、少し低め、小動物の様に愛嬌のある顔で いつも俺を見上げて来る幼なじみの『カナデ』 「今日もお疲れさま、カナデ ほら、今日もお菓子持ってきたぞ」 「わーーーありがと! 部活終わりは、やっぱりイッちゃんのお菓子だね」 カナデとは、小学校からずっと一緒で高校で離れるかと思っていたのだが 僕には、行きたい高校も目標もなかったので カナデに言われるがまま同じ高校に進学した カナデは、その高校からバスケで推薦をもらっていた 167cmの身長でまさかの推薦を勝ち取れる程に彼はエリートだった 高身長の選手の中をかいくぐりバネの強い脚力で誰よりも高く飛び 敵選手のガードを越え綺麗に曲線を描くシュートの鮮やかさはエンターテイメントとしてみなを魅了した そんなコート内の貴公子も俺の前では、お菓子をねだる その姿が愛おしくつい頭をなでてしまう
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