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「なんでそんな事になるの!それは認められない、そんな夜の時間の事を
決めちゃダメだってば!!モチベーションっ!!ねっ!!」
鶴城さんが猛抗議している姿を僕は心の中でそっと応援するかできない。
僕も反対です!なんて恥ずかしくて言えない、そんな勇気はない。
鶴城さんのモチベーションはともかく、離れて寝なきゃいけないのは寂しい。
「兄さま!流石にそれは私も反対です!愛斗様にはもっともっと、こう、えも
言われぬような艶を!朱羽様のためではないのです、これは私のサークルの
死活問題になってしまいます!飢えてしまってもいいのですか?全国の数多
の乙女たちが一斉に渇いてしまうのですよ?」
小春さんが初めて鶴城さんの味方になったかと思ったが、完全に自分の楽しみの為のものだったことが残念でならない。この必死に話す姿が妙に虚しさと悲しさを僕に与えてくる・・・。猛抗議されている上野さんも流石に引いている
だって、身体がのけぞっているのだから・・・。自分の妹がここまでなんて気づかなかっただろうし、気付きたくなかっただろうなって思う。
黙っていれば、通り過ぎた男性が振り向いてしまいたくなるくらいに可愛いのに、口を開けば”毒”と”変態”があふれ出て来るなんて・・・っ
残念としか言いようがないと僕は思う。
「ちょっと小春の言ってる意味は分かんないけど、とにかく上ちゃん!それは
絶対に嫌だ!愛斗といちゃいちゃ出来ない夜なんて滅びてしまえ!!」
鶴城さんの言ってることはわがままを言っているだけの小さな子供にしか思えない、滅びろなんて中2病以外のなにものでもない。
僕の大好きな人はこんな不治の病を患っていたのか・・・。先が思いやられる
「朱羽様も小春も日本語を話してくださいね、滅びろとか、渇くとか・・・
わたしはね、愛斗様の身体と周りからの視線を気にしているだけなんです。
こんなベタベタと真っ赤な痕を付けまくって、愛斗様がどう思われるのかと
か考えたりしませんか?普通。朱羽様が愛斗様にどれだけご執心かって事は
そんなことしなくてもわかってます、イヤって言うほど・・・。」
優しい上野さん・・・。僕の事を考えてそこまで想ってくれるなんて。
僕が周りからどう見られてしまうかとかそういうのを客観的に考えてくれるなんて、涙が出そうだ。
「そーんな事言って・・・!結局は上ちゃん的に許せないだけでしょ!愛斗の
真っ白な肌にわたしの痕が付くことが気に入らないだけなんだ!」
「気に入りませんよ!こんなべちゃべちゃと!!品がない!愛斗様のこんな
愛らしい顔にこんな下品な痕は似合わないって言ってるんですよ!バカがっ
大事ならそういう事も考えないさ行って言ってるんです!」
上野さんの言葉にぐうの音も出ない鶴城さん。確かにこの痕を隠すのは大変なのだ、何やら訳の分からないものを沢山塗られて隠されて・・・。
気持ち悪いとは思わないけども、首筋に塗り慣れてないものをぬられると妙な感があって落ち着かない。
「――――か・・・数を減らします。それで許してください。だって・・・
だって、興奮するとついこう勝手に身体が動くんだもの!仕方ないよね?
男の子ってそういう生き物じゃない?」
やっぱり・・・というか当然というか・・・。鶴城さんは秒で負けた。
興奮するとって言うくだりは僕にはいまいち理解できないけども、上野さんにはなんとなく通じたらしい。”それは・・・まぁ・・・”とか口ごもっていた所を見ると、彼にも似たような経験があるらしい。でもあの冷静な上野さんが興奮して勢いだけで行動するなんて想像できない。いつも頭の中で整理整頓された行動を淡々とこなしている様に見えるから。
決して悪い意味で言ってるんではなくて、常に物事の一番大事な部分をしっかりと見て答えを出しているから。
「よしっ!愛斗!これからは寝るときは何時いかなる時も首に手を置いて、
わたしの攻撃をガードしてくれ!!」
何で僕がそんな面倒くさい事をしなきゃいけないんだ?そんな体制絶対に寝にくいから嫌だ。
「無茶な事言わないでくださいよ、そんなの無理ですよ。寝返りだってするし
思わず万歳のスタイルで眠ってしまったらどうするんですか?」
自分を抑制することを諦めた鶴城さんはついに僕頼みになってしまった。
「えー・・・そこは頑張って欲しい。あー、でも隠してる姿を無理やり剥がし
てっていうのも捨てがたいよねっ!もーっ!どうしたらいいんだ!!」
両手で頭を挟み、左右にブンブン振る姿はとても大事な事を悩んでいる様に見えるが、実際の悩みはあまりにもどうでもいい事で、そんな姿を見せられている僕たちは呆れてしまった・・・。
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