ぁんっ!

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「綾子さま―っ!眼福ですよ!ここが大祭のメインイベント会場ですよ!!」 興奮しきって何かのメーターが振り切ってしまったのか、小春さんは壊れかけているらしい。ここがメインイベント会場な訳がない。ここは変態の巣食う魔窟だ! 「これよ!コレコレ!!んもーーーっ!たまんない!もうわたし満足よ!翠一  さんに悪いけど、もうこれ見れたら満足ーー!大祭さいっこう!」 いや、お二人にはハッキリ言って大祭なんて関係ないですよね?この一連の流れを見て何処に大祭の何かがありましたか? メインディッシュとか、メインイベント会場とか・・・この女子たちにとって僕が大祭だったのかもしれないとさえ思えてくる。 何時まで経っても僕の口は大きな手で覆われてしまって何も言葉を発することが出来ない。仕方がないから、ペロッと手のひらに舌を這わすと、大げさすぎるほどのリアクションで鶴城さんの手が離れて行く。 「のぁぁぁっ!ごっ!ご褒美っ!!」 ―――違う、決してご褒美などではない。手を離せという合図だ。 ったく・・・変態の脳内は都合にいいようになんでも変換してくるから困る。 鶴城さんの”ご褒美”発言に、壊れている女子二人が嬉しそうに”ご褒美”と何度も囁いている。 「ご褒美な訳ないでしょ、上野さんの言う通り、お二人はもう横になってくだ  さい。何時に起こせばいいんですか?ほら、早く。」 僕たち3人がくっついて眠っていた布団は綾子さんの反復運動でクシャクシャになってしまったが、それを直して、ポンポンと叩いて合図する。 僕たちが並んで眠っても全然余裕だったから、きっと鶴城さんたちのような大柄な人の為に用意されていた布団なんだと気が付いた。 「えーーーーっ!添い寝してくれなきゃ嫌だ!上ちゃんと一緒に寝るなんて、  地獄だよ、なんの罰ゲーム?わたしに苦痛を与える試練なの?」 「黙れ、変態。」 どんなに長い言葉を並べてもきっと鶴城さんには通じない、ただ思った事を素直に言うのが一番だ。そもそも添い寝なんかで済むわけがない。間違いなくその大きな手が自由自在に動いてやんちゃの限りを尽くすだろう。僕のは分かる ジトっとした視線を送っていると、観念したのかやっと横になる事にしたらしい。さっさと寝ればこんなに疲れる事はなかったのに・・・。 「3時間ほど眠ったら交代なんです。申し訳ございませんが愛斗様、お願い  してもよろしいでしょうか?」 ブツブツ言って肝心な事には返事をしない、何を拗ねているんだか・・・。 「わかりました、大丈夫です。ゆっくり休んでください。」 僕は上野さんに言うと、エルボーをくらわすように鶴城さんを引き倒すと静かに目を閉じた。なんだかんだと言いながらも彼らは直ぐに寝息を立てていた 朝からずっとやるべきことに追われていたのだ、見た目には分からないけど物凄く疲れているはずだ。数時間でもいい、ここでは何も考えずにゆっくりと眠って欲しい。鶴城さんの側に座っていると、無意識なのかわからないが、僕の手を握って来た。温かくて大きな手だ、僕の大好きな男の手だった。 握って来たというよりも添えてきたという方が合ってるかもしれない、だから僕は彼の手をキュッと握って頬をそっと撫でて、おでこにキスを落とした。 よく眠れるおまじないのつもりで・・・・。  
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