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また朝がやってきて、僕は目覚ましが鳴る前に目を覚ます。
申し訳ないけど、もうこの目覚まし君には用事がないかもしれないな・・・。
下に降りて、冷蔵庫の確認をする。お弁当の準備と朝食の準備を始めるのだ。
今日も2個ずつ作って、なんとなく寂しいという気持ちがなくなっていることに気が付く。
「おはよう、愛斗君。今日も暑くなりそうだね。」
鶴城さんが起きてきて、新聞を持ってソファに腰掛ける。僕はコーヒーメーカーを作動させ、彼に出来立てのコーヒーを渡す。
「おはようございます。これ、どうぞ。」
「ありがとう。」
昨日あったことが何も無かったかのように普通に振る舞う僕たち。
ちょっとでも意識なんてしたら、ここに居ることもできなくなってしまいそうだったから。
朝食を済ませて、急いで学校に行く準備をする。バスが僕を待っている。
けれど、学校に行くのは正直憂鬱だった。御園さんに織部君、どう頑張ってもまた絡んでくるんだろうと思うと、頭痛がしてくる。
「送っていこうかぁー?」
居間からのんびりとした鶴城さんの声が聞こえて、僕は行ってきますとだけ言って、玄関を閉めた。
送り迎えなんてしてもらったら、なんか本当に恋人みたいで嫌だ。
僕はまだ認めていない、僕が彼の婚約者だとか言うことを。
身体の関係から入ったとしても、そのあとに心が付いてこなければそこで終わりだとおもう。
今日も暑くなりそうな気配を感じながら、バス停に向った。
そして、違う意味であつくなった。このバス停・・・・
どうして朝からオールスターなわけなんだ?
「おはよう、御木。」
「おはよう、御木君!」
織部君も御園さんも路線ちょっと違うはずなんだけどなぁ。どうしてここにいるのか意味が分からない。御園さんにいたっちゃ、おそらく自宅の方が学校に近いと思われるのだが・・・・。
「――お、おはようございます。」
明らかにいつもより人が多いこのバス停。織部君目当ての女子、御園さん目当ての男子。明らかに普段見ない人たちがここに並んでいる。
2人に話かられた僕をちらっと見て、不満そうな表情をしているのを僕は見逃さなかった。
「遠回りですよね、2人とも。時間の使い方考え直した方がいいですよ?」
僕は2人にそういうと、列の一番後ろに並んだ。すると、2人がわざわざ僕の所まで並びなおす。そして、他の人たちも何故かぞろぞろとその後ろ、後ろへと続いていく。なんともおかしな光景が出来上がってしまった。
最後に来た僕が先頭になっているのだ、しかも停留所の看板から大分と離れた位置に・・・。僕の目の前はサァッとひらけてしまっている。
「・・・あの、これ、なんの罰ゲームですか?嫌がらせですか?」
僕は振り返り、2人に話しかける。誰だってこんなことになったら思うに違いない。
「―――知らない、私はただ御木君と話したかっただけだし、隣の席に
座りたいと思ってるだけだもん。」
御園さんはそういうが、ここに居る男子は織部君以外はみんなあなたと同じバスに乗りたくてここに居るんだと思いますよ?
”だもん”って言われても、こっちがこまるんだもんっ。
僕はこの2人の奥を見て声をかける
「あの、どうぞ皆さん、前に並んでください。僕は一番遅く来たので。」
と、言ったのに誰一人僕と目を合わせることなく俯いている。
なるほど、ならば仕方ない。僕は諦めて、最前に進んだのだ。
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