1441人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
やっと授業が終わった。最近学校にいる間の時間がやたら長くかんじてしまうのは、きっと人に話しかけられているからだろう。
集中している時間がないから、ダラダラと時計を見てしまうんだ。
僕は、リュックに必要な教科書を詰め込む。さっさとしないと、また変に誰かに声を掛けられてしまう恐れがある。
今までこんな風にバタバタと準備をしたことがあっただろうか。
本当に迷惑な話だ。僕の時間が、他人によって計画を崩されているなんて。
「御木くーん!待って、お願い、待って。」
教室の後ろのドアから廊下に出た辺りで、また御園さんに止められた。
もういい加減にしてくれ、ここ最近毎日同じことを思っている事にも飽き飽きしているんだ。
「――何ですか?僕、家に帰ってやらなきゃいけない事があるんです。」
それに、多分、本当に鶴城さんはあそこで待ってると思う。あの広場で、あの黒い車で僕を待ってると思うんだ。
「うん、あのね。私、今度パパの誕生日にお料理を作ろうと思ってるのよ。
それでね、あの、私実はお料理が得意じゃなくてね、良かったら御木君
教えてくれないかなって・・・。ダメ・・・かな?」
いや、あなたつい最近スーパーにいたじゃないですか。お友達と買い物かごに一杯食材積んでませんでしたか?
「えっと、けど、御園さん、この前スーパーで会った時、メチャクチャ食材
買い込んでませんでした?なんか見たことないスパイスもあったし。」
僕は人の買い物かごを見てしまうという、失礼な行為をしてしまう時がある。
どんな調味料を使っているのか、今後の参考にさせてもらうために、マダムたちのカゴを見てしまうのだ。
先日、御園さんと初めてスーパーで会った時も、つい見てしまったのだが、見たことないようなスパイスを買っていたし、ムール貝やイカなど、結構料理が出来そうな食材がわんさか入っていたはずだ。
「あっ、あぁ、あ、あれはねっ、私じゃないの!友達が作ってくれるって、
それであんなにお買い物してたのよ。」
御園さんは僕の質問に、両手を顔の前でひらひらと振りながら答える。
「じゃ、その方に教えて頂けばいいじゃないですか?そんなにいいお友達が
いらっしゃるんだから、僕に頼むようなことじゃないでしょう?」
あれはきっとパエリヤとか、パスタとか、なんかよく分からない、イタリアンみたいなやつを作ったんだと思う。
基本、僕は和食中心だし、よくてもハンバーグやら、中華ぐらいなもんだ。
凝ったオシャレな料理まで作れたりしない。ばあちゃんが教えてくれた。田舎の野菜と魚中心の料理がメインだ。
最初のコメントを投稿しよう!