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校門に愛斗の姿を見つけた時、思わずここにいると、クラクションを鳴らしたくなってしまった。美しいわたしの婚約者。
真っすぐにわたしの方を見て、迷うことなくこちらに向かってきてくれた。
ただそれだけの事なのに、震えるほど嬉しかった。
彼がわたしを拒否していないという事実が、わたしをこんなにも喜ばせる。
昨晩の彼の乱れた姿は、わたしの理性を壊しかけた。潤んだ瞳と、漏れ出る小さな声。しがみついて離れない小さな手。
わたしが我慢できたのは、彼がまだ18歳を迎えていなかったから。
決まりである事を守るために、必死で我慢しただけ。もし、そんな決まりがなければ恐らく抱いていただろう。
愛斗の可愛い顔を思い浮かべながら、昨日は何度も出してしまった。
もうこんな大人がみっともないと思いつつも、彼のあの顔を思い出す度に、わたしの中心は反応し昂ってしまった。
「おかえり、愛斗君。」
わたしが言えば、彼は恥ずかしそうに答えるんだ。
「ただいま、鶴城さん。」
恥ずかしそうに、でもその感情が何かという事もわからず、葛藤している姿もわたしを興奮させる。初めて愛斗君を見た時に、わたしには彼しかいないと思った。とびきり美しい子供。でも瞳だけは大人の色気を出していた不思議な少年。15~16歳のわたしにはあまりにも衝撃的な出会いだった。
愛斗君にはその時の記憶は薄っすらとしか残っていないかもしれない。
雅夫さんと久美子さん、晶さんと葛葉さんと真希ちゃん、そして愛斗。
当時は麻井だったが、血は御木の血も混ざっているため集まらなければならない決まり。
わたしはその時にもう、愛斗しか目に入らなかった。わたしの婚約者を選び探す行事。迷うことなく愛斗を選んだ。
わたしは男じゃなきゃダメな訳でもない、女も全然大丈夫だ。むしろ愛斗に会うまでは普通に女の子が大好きだった。今でも女の子は大好きだ。
けれど、愛斗は性別関係なく、本当に一目で心が奪われたのだ。
わたしの婚約者に選ばれた子は、鶴城の力をもって、全力で保護される。
18歳になるまでどんな事があっても、対象を無傷で守る。
葛葉さんが亡くなった事で、全く関係のない人間が入り込んできたのは誤算だった。晶さんの状況からしてみれ、最善策だったのは間違いない。
愛斗はその美しさ故に、嫉妬という醜い感情をぶつけられ続けた、そして持病が悪化し、こちらに帰って来た。
どのみち、彼はこの地に帰ってくる運命ではあった。だから持病が悪化したことも、もしかしたら血のなせる業だったのかもしれない。
彼には気の毒だけれども。
今度の休みには、わたしの実家に彼を連れていくのだ。美しく成長した愛斗をみたなら、皆が声を失うに違いない。あぁ、楽しみだ。
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