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家について、毎日の事を繰り返す。洗濯、お風呂のお湯張り、晩御飯。 そろそろ買い物に行かなきゃならくなって来た。冷凍してある食材も残りがわずかになってきてる。週末にでもまたスーパーに出かけよう。 御園さんに会わない事だけを願って・・・。 「あ、愛斗君。今週末はわたしに付き合ってねー。言ってあったやつ。  忘れてないよねー。」 すっかり忘れていた。なんて言ったらまた拗ねるんだろうな。 僕は笑顔を貼り付け、鶴城さんに答える 「――は、はい。忘れていませんよ?大丈夫です。」 鶴城さんは僕の顔を見ると、訝し気な表情に変わった。バレたのだろう。 僕はこういったごまかしが上手いとは言えない。人づきあいがなかったから、そういった類のスキルもメチャクチャ弱いのだ。 「・・・忘れてたでしょ?完全にスカッと抜けていたでしょ?わたしとの  約束なんてなかった事になってるでしょ!」 ほら、予想通りの展開だ。あぁ、僕のもっと上手にかわせるスキルがあればこんな面倒くさい事にはならなかったのに。 僕は自分のスキルのなさを痛感する。流石に約束を忘れていた僕が全面的に悪いのだ。 「す、すいません。最近立て続けに色んなことがあって、もう日々いっぱいで  約束とかもう、なんか頭の片隅にいっちゃってました。」 半分はあなたの所為なんですよ、鶴城さん。ここまで出かかった言葉を飲み込んだ。忘れていた僕が悪い! 「色々って、学校でなんかあったの?」 鶴城さんが心配そうに僕を見ている。しまった、ついうっかり呟いてしまった 学校で起きている、面倒事を家に持ち込んだりしないようにしてた。 それは、ばあちゃんが生きていた時も同じようにしてた。 そもそも、面倒事なんて起きなかったけれども・・・。 「あー、いやー、その・・・。」 僕は話そうかどうか迷う。だって、家族でも何でもない人。ましてや勝手に家に転がり込んできた変態だ。 「わたしは愛斗君の家族ではないけど、あぁ、まだね、まだ!でも、君が何か  悩んでるなら力になりたいよ。君がそんな顔をしているのに、わたしが放っ  ておけるわけがないだろう?」 鶴城さんは僕の思っている事を簡単に読み取ってしまう。 まるでばあちゃんみたいだ、こういう人には隠し事が出来ない。 僕は観念して、最近学校で起こっている身の回りのことを話し出した。 「――結局さ、愛斗君がモッテモテっていうことなんでしょ?」 話を聞き終わった鶴城さんは開口一番そう言った。 この人は僕の話を聞いていたのだろうか・・・不安になる。 「いや、どこがモテモテなんですか?やたらと絡まれて僕の平穏な日常がなく  毎日苦痛にあえいでいるという事をはなしたんですよ?」 鶴城さんは、コーヒーを一口飲んで微笑む。僕はやっぱりこの笑顔は嫌いになれない。 「違うよ、愛斗君。君は気づいていないだけで、その2人は君の事が好きなん  だよ、間違いない。わたしには分かるよ?同じ気持ちだからね。」 彼がそう優しくいっても、僕には理解できない。
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