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わたしはシャワーを浴びながら、愛斗の話を思い出す。 織辺君と御園さんか・・・。ふん、織辺君は一度会ってるから分かってる。 あんな挑発的にわたしに向かってくるんだから、そうのだろうと確信はあった 織辺君の家のことはもう調べた、彼のお父さんは県庁にお勤めのお偉いさん。 なかなかの紳士で、人気もある。奥様は県外でイベント関係にお勤めだった、 美しい人。円満で、弟と、妹がいる。 まぁ、これといって問題はない。家の役には付いているらしいが、それだけ。 問題は御園家。これがまた面倒くさい。そもそも、御園家は地主で、昔ながらの旧家ってやつ。もちろん、家とのかかわりもまあまあ深い。 進言等は出来ないにしても、ほんっとに面倒くさい。 おとうさんは、ここらで沢山の会社を経営、県外にも子会社がある。 おかあさんは、一応元モデル・・・らしい。一体どこからどこまでがモデルなのか分からないけど、確かにスタイルはいいし、顔もあか抜けている。 ただし、御園家は、御木家に対して並々ならぬ執着があってそれがまた怖い。 父親は、葛葉さんにずっと片思いをしていて、事あるごとにプレゼントだのなんだのと、久美子さんがよくぼやいていたらしい。 晶さんと出会って交際が始まると、興信所を使い晶さんの事をキッチリ調べ上げるほどだったらしい。 晶さん自体がもう完璧な人過ぎて、太刀打ちできなかったみたいだけど。 母親は、晶さんとは県外のとあるイベントで晶さんに会った事があるらしい。 その時からもう、猛烈にアピールし玉砕。所がそう簡単に諦めるような人ではないらしく、晶さんの周辺を探っていた所、この町に恋人がいると聞きつけ、葛葉さんと自分を比べようとやって来たらしい。 当然、葛葉さんの美しさには勝てるわけもなく、晶さんと葛葉さんのあまりのお似合いっぷりに、ストーカーみたいなことを断念。 失意でこの町の飲み屋街で飲んだくれている所を、今の夫と出会い、何となく付き合い始めて今に至る。 そんな御園家が、両親にとってまるで宝のような存在、愛斗を見初めた娘の応援をしない訳がない。 積年の恨みならぬ、積年の恋心を娘に託そうとしているのだ。 こういっちゃなんだけど、御園家は苦手なんだよ。あの嘘くさい笑顔とか、金でどうこうしたがるところとか・・・。 娘が男を見る目があるということは認めてやろう。わたしの愛斗の美しさに気が付き、なおかつ嫉妬ではなく恋心を抱いた辺りは素晴らしい。 女性なら少なからず嫉妬してしてしまうほど、愛斗は美しいからね。 わたしの愛斗はね! 今のところは上手に逃げおおせてはいるらしいが、このままでは済まないだろう。御園家はどんな事をしても愛斗を手に入れたがっている。 それでいて、御園香菜はまた可愛らしい顔をしている所がうっとおしい。 流石、母親似なだけあって、顔は本当に可愛らしいのだ。認める。 今度の総会では、この案件を議題に出さなければならないだろう。 わたしの決めた婚約者に手を出すことは許されない行為だからだ。 それでも大人しく引いてくれるかは分からない。そういう家だから。 「すいません、鶴城さん、お風呂まだかかりますかー?」 考え事をしていたため自分がどれだけ長風呂だったのか分からなかった。 脱衣所から愛斗に声を掛けられて、やっと我に返ったわたし。 「あー、ごめんねー。大事な所を入念に洗ってたら、時間かかっちゃった!」 わたしの答えに満足しなかった愛斗は盛大な音を立ててドアを閉めていった。 なんて可愛いんだ、照れているんだな。この照屋さんっ!! とにかく、これから愛斗の周辺は以前よりも警戒レベルを上げるべきだと思う わたしは風呂からあがり、愛斗を抱きしめに行くことにした。
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