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「もうっ!だから何なんですか!もういいでしょう、もう十分でしょう?  いい加減に終わりにしてください、うんざりです!」 僕は掴まれた腕を思いっきり振る、それでもびくともしない織辺君の手が憎たらしくて仕方がない。痛いほど掴まれた腕、きっと手の跡が残ってしまうに違いない。 「御木っ!違うっ!勘違いしてる、俺は友達とかの話は、そういう事じゃない  俺はっ!俺はお前にちゃんと男として見て欲しいんだ!友達じゃなく、  恋人として見て欲しいと言っているんだっ!!」 織辺君が何を言ってるのか頭に入って理解するまでに時間が掛かった。 僕は男で、織辺くんも男。僕は気持ちの悪い子だけど、彼は普通の子のはず。 僕と同じ境地に居るはずない人、むしろ疎遠であるべき人。 そんな人が今何を言った?僕に対して何を思ってる? 「織部君、何言ってるんですか?僕は男だ、君も男なんだ。そんな事・・・  おかしいでしょう?君は女の子にも不自由していない、それなのにっ!」 似たようなことを多分、誰かにも言った気がする。 こんな勝手の女の子が群がってくるような顔をしている人が、僕みたいな男を選ぶなんて世の中間違っている。 「おかしい・・・かもしれない。でもおかしくなんかない、ちゃんと考えた。  沢山悩んだ、それで出た答えなんだ。俺は、御木が好きなんだ。」 身体が震える。こんなおかしい事ばかり起こっていいのか? いやいや、よくないだろう!!絶対によくないっ!! 織部君親衛隊がこんな話を聞いたら、僕の残りの高校生活は終わりを迎える。 学校イチもてる男が、男の僕を好きだという事実!こんな話、週刊誌だって喜んで取り上げるだろう。 「あ、わ、あ、いや、落ち着いて下さい。待って、本当に。」 僕は手のひらを織部君に向け、”待て” のポーズをとる。 僕がいったん落ち着きたいのだ。この状況を整理しないと、この場に倒れてしまうそうだ。 「―――今すぐ答えが欲しいとは思っていない。でも、知っててほしい。  俺が御木の事を恋愛感情を持ってみているてこと。」 彼はそういって、バス停に向って戻っていった。 僕はただ一人この場に残り、頭が真っ白な状態で突っ立っていた。 セミの鳴く声が頭の中に響き、わんわんと耳鳴りのように聞こえてくる。 ぐるぐる回る音と視界で、僕の世界は真っ暗になってしまった・・・。 真っ暗な世界で聞えてくるのは、織部君の声。僕の事が好きだと何度も言う。 鶴城さんの甘くて優しい声も聞こえる。大丈夫だと何度も何度も言う声。 僕はどちらの光に向って手を伸ばす気なんだろう、自分が決めるべき答えなのに、どうしてこんな客観的に考えているんだろう。 僕は誰にこの手を預けようとしているんだろう・・・ こんな僕を受け止めてくれる人は誰なんだろう・・・ セミがうるさい、ずっと鳴いてる。子孫を残すためにその短い人生をかけて。 一生懸命、求愛活動をしてる。でも僕はその声がうるさいと感じる。 人に愛される資格も無いような僕が、セミの求愛活動を疎んでいる。 あぁ・・・世界がぐるぐる回ってる。このまま深いところまで落ちていく。 そのまま底まで落ちて、ずっと眠ってしまいたい。
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