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「これ何?」
そう言って手に取ったのは、埃をかぶった一枚の写真。
埃をはらうと、蔵を背景にこちらを見つめる女の子が写っていた。
「ああ、それはね」
もう80を超えた祖母が、寂しそうで楽しそうな言い表し難い表情で語ってくれた。
昔、祖母に幼馴染がいたそうだ。その子は写真の子で、名前は「ひなみ」という。
祖母の気の弱いさとは対極で、ガキ大将のような性格だったそうだ。そんなひなみには、母親がいなかった。その理由は今でもわからない。ただ、父親が何か隠しているのは子供ながらに察したらしい。
「へえ。その子は今どうしてるの?」
「……亡くなられたわ」
祖母と同い年なら、病気で亡くなってもおかしくはない。だから、「ふうん」とさして興味なさげに返した。
「あれからもう四十年も経つわね」
絶句した。だって、四十年前って、祖母は二十代のはずだ。
「ひなみは二十八歳で……急死したの」
そんなに早く亡くなるなんて。でも、だからといって祖母はこんな悲痛な顔をする人だっただろうか。もしかして何か、死ぬこと以外にあったのではないか。
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