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さて、これから僕はここで死ぬ。自殺、する。
朝登校してきたクラスメイトの驚く顔が見られないのは、残念だ。
そして君達は初めて気づく。自分達がしてきた罪の重さに。そこで反省してくれるなら、僕は君達を許してやってもいい。
僕がいない間、美香は大丈夫だっただろうか? まだギリギリ大丈夫であってくれ。ここで、僕が全部、終わらせてやるからさ。
僕がかばった子というのは、僕の彼女の美香だった。
黒板には白、赤、黄色のチョークで、ミカしねと書かれ、美香の机にはマジックで同じようなことが書かれてある。他にも下品で吐き気を催す言葉のオンパレードだ。
僕がいなくなればイジメの矛先が美香に向くのは火を見るより明らかだった。ただし、それは僕が尻尾を巻いて逃げた場合に限る。だから僕は、ただではいなくなってやらない。
イジメに関わっていた奴も、ただ傍観者気取って見ないフリしていた奴も、こんなクラスにしてしまった担任も、全員の記憶に深く、深く刻み込んでやる。
追い詰められた人間が選んではいけない選択をする、その後押しをしたのは自分自身だということを、理解させてやる。
そうすることで、それを目の当たりにしたクラスメイト達はもうイジメなんてしないだろう。この先の未来でも、彼らの中で誰かを再び虐げようとする者が現れた時、そいつの脳裏に僕の死体がチラつく。そして自分で自分にブレーキをかける。
まぁ、そんなあるかもしれない未来の話なんてどうでもよくて、今このクラスからイジメさえなくなればそれでいい。結果的に美香はイジメられなくなるのだから。
少し、物思いに耽りすぎたかな。そろそろ時間だ。朝日が昇る。十五歳で人生に幕を下ろすその時に、美しい朝焼けなんて不要。あるのはただの、静寂だけでいい。
黒板と机の文字は綺麗に消しておいた。さぁ、あとは僕が死ぬだけ。ゴミはゴミらしく、死んでいくのみだ。
僕は教卓に立つ。みんなの机が僕に注目している。手に持っていた包丁を首に持っていく。刃先が首に当たる。
「さよなら。人生」
あとの僕に必要なのは、首にそっと当てた包丁をスライドさせる勇気のみ、だ。
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