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「いいから‥‥自慢する前に、さっさと答えろ。」
淡々と言葉を口にする晃のイントネーションに、半分、しかめっ面でテンションを下げる忍。
「そういう所は、相変わらず手厳しいなぁ。」
「言ってる場合か‥‥。今の俺達には、時間がないんだ。それは百も承知だろ?」
素早い行動力で事件を追い詰めていた孝彦も、様々に絡み合う背後の見えない力を的確に見定めていた亜紀もいない。
それぞれが巻き込まれた世界の時間軸の上、今の晃とは異なった場所にいる。
もし、この行き着く先に、生死も分からぬ孝彦、そして亜紀との接点があるならば、今はただ前を突き進むのみ。
たとえ、その先が行き止まりであったとしても、すでに動き出している運命の歯車を止める事など誰にも出来はしないのだ。
だとしたら、その僅かな隙間に何かしらの杭を打ち込む事で、物事を大きく変える希望くらいは持ち続けていたい。
そんな思いに、否が上にも晃の冷淡さは、いつも以上に厳しさを増していた。
「晃さんの言いたい事は、わかってるよ。だから僕だってここにいるんだ。でも、自分を追い詰める事だけは止めて欲しい。きっと兄貴は、そんな事望んでないと思うから‥‥。」
忍にとっても、隣にいたはずの孝彦が居ない事は、大きな心の痛みに違いない。
海底深くに沈んだ孝彦の存在を思うと、誰もがヤリ場のない思いを、自らの時間の中に埋めようと必死になる。
果たして、それが晃の本心がどうかは分からないが、この時、晃自身が抱いていた取り止めない焦りの気持ちに気づいていたのは、もしかしたら、この忍だけだったのかもしれない。
「まさか、お前に説教されるとはね‥‥。どうも、孝彦のようにはいかないな。」
苦笑いを浮かべ、微かにうつむいた晃の心情を、傍らで受け止めていた忍。
「晃さん。ここからが、本当の謎解きだよ。これが解けないと、先へは進めないんだからね。」
そう口にした忍の指先が、切り替えるかのように次の映像を映し出す。
「ここに映し出されている巨大な機械が一体何なのか‥‥。僕には、すぐに分かった。これは、高エネルギー加速装置。そして、もう一枚‥‥施設は異なるけど、原子核の実験研究施設だ。ただし結論から言うと、重要なのはこの研究施設自体じゃない。この二つの研究施設での研究内容を、つい最近のものから過去にさかのぼって確認してみたけど、これと言って引っかかって来るものは全く無かったからね。唯一、僕が気になったのは名前の方‥‥。」
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