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データ画面を見続けている真澄の顔に、戸惑いにして厳しい表情が渦巻いている。
そんな彼の耳元へと、突然の車外での騒ぎが気を散らしていた。
何気に視線を向けた先で、車へと乗り込んで来た刑事の小林。
「一体、何だ?」
「それがですねぇ‥‥‥あのぉ‥‥。」
言葉を濁した先で、彼の背後から強引にも姿を見せた人物‥‥。
それは、あの渡邊忍だった。
「お前‥‥一体、何しに来た?」
「アニキが、窮地に追い込まれてるのに、じっとしていられる訳がないじゃないか。」
「ここは、すでに部外者立ち入り禁止区域だぞ!一体、どうやってこんな所まで入り込めたんだ。」
真澄の問いかけは当然の事だ。
厳重に張り巡らされた警備網の中、誰一人として一般人が入り込めない状況をどうやって突破して来たのだろうか‥‥。
『さては‥‥。』
傍らへと見定めた視線が、顔をそむけた小林を見下ろしている。
「全く‥‥‥。こいつを作戦に組み込む事を関崎さんは許可してるのか?」
<すまない真澄君。私が、独断で許可したんだ。>
真澄の背後から聞こえて来たのは、通信無線に乗った関崎の声だった。
<今は、どんな人物の手でも借りたい状況なんだ。彼の知能とその力量を、屋敷にいる全ての研究員達が認めている以上、少しでも最善の選択が出来るのならば、彼の能力を最大限に生かしたい。>
さっきから一向に進まないデータ処理を前にしていた真澄には、それ以上拒否する言葉は見つからなかった。
無言で返す真澄の視線を見据えたままに、コンピュータ画面へと映し出されていたデータへと視線を向けた忍。
「お願いです‥‥今の状況を教えて下さい。助けたい気持ちはあっても、僕に出来る事は限られている。」
その言葉に何かを思い切ったかのように、真澄が説明を始めた。
「この一帯、そして建物すべてに爆弾が仕掛けられている。たとえここから侵入する為に地雷を解除したとしても、全ての爆破装置の回線は恐らく敵の手に握られている。残された時間の中、全ての爆発物に繋がっている時限装置の爆破解除を優先するのか、それとも、突入に最低限必要な目の前の地雷を解除し、すでに潜入している岡本達の救助に向かうのか‥‥‥。今は、選択を迫られている状況だ。」
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