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「ところで、あなたが口にしていた昔話、あれは本当の事なんですか?」
「さあ‥‥どうだろう。全てが嘘だとは言い難いのかもしれないが‥‥。」
「まさか、彼の両親が研究者だと素性を調べた上で、あんな話を?だとしたら、あなたの素性も疑わざるを得ない。なぜなら、彼の身元はいまだ国家的にも極秘扱いになっているはずだもの。」
「偶然だ‥‥そう言ったら、また君に疑われそうだね。才能ある子供の場合、まして、彼のように本来IQの非常に高い少年ならば、その遺伝子を引き継いでいる可能性からして、両親が何かしら有能な実績を伴っている事が多い。それに、ネット上で全ての情報を防ぎきる事など、たとえ極秘扱いであったとしても、今の情報網では難しいだろうな。たった一つのキーワードを投げかければ、塵のようなコメントでも膨大な個人情報になる。人より才能がある人物ほど、目立つ存在でもあるからね。ただし‥‥‥彼の場合、今の両親は本当の親ではなさそうだ。」
「えっ?」
「どんな不器用な親だとしても本当に自分の子供ならば、何の迷いもなく、突然におかしくなった子供を真っ先に施設に突き放す事などしないはず。恐らく、孤児を養子にしたのか、訳あって引き取ったのか‥‥という所だろう。」
石吹の返す言葉に、瑠依は返す言葉も見つからない。
忍の関心を引き付け、かたくなだった心を解き放ち、それでいて、これ程までに冷静に忍の生き様を分析している。
いくら医師免許を持っていると言っても、精神科医でもなく、今は事務長という肩書の立場にいるにも関わらず‥‥だ。
「石吹さん、あなた一体、何者なんですか?」
「君は、すでに僕の事も調査済みなんだろ?」
「それは‥‥‥監察医でもあり、検察捜査も兼ねていたコロナ―としての経験上から推測している言葉ですか?」
向かい合ったまま、じっと立ち尽くす二人。
それ以上の心の内を、お互い探ってでもいるかのように沈黙が漂う。
「やはり‥‥な。君は、花木田南緒人から一体どこまで聞いているんだ?」
すでに現世にはいない花木田南緒人。
その人物を介し、瑠依と石吹は現実世界で今、顔を見合わせていたのである。
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