始まりのベル

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古見成(こみなり)ふさなは28歳。GJ旅行会社に勤務して5年になりました。彼氏はいません。お酒はいけます、下戸ではありません。容姿については普通の普通だと思います。 旅行は好きの範囲内にあります。一応旅行会社に勤めているわけなので、好きでないと何かと不都合が起きるのではないでしょうか。 ただ、旅行の楽しみ方がわかりません。 何を基準に旅を楽しむというのか。根底にある旅という膨大な情報を処理をしてどのようにして楽しさ面白さに結びつけるのか。そういうのがよく分からないのです。 食べ歩きを満喫する。 絶景の場所を見る、その土地の雰囲気を感じる。旅行ってそういうのを楽しむのかしらん。 でも、例えば。 毎朝昇る朝日の風景は何処とも同じであってそれはまた毎日同じではないこと。 毎日を注意深く眺めていると、 太陽も赤く燃え立つときもあれば、空が明るいだけのときもある。 数分前の雲の形は今はもう違っていたり、自然の変化をじっくり観察できる住まいは有名所の風景となんら変わりはないような思いでいます。 ただ、興味はあるのでそれらの所へ赴いてはいきます。有名なだけあって素晴らしいです。否定はしませんが、行った旅先のほんの少し滞在しただけで良さなんてわかる筈もない。 おいしいものも今じゃあお取り寄せでお家にいてもゆっくり食べられます。これらを考慮して旅行の楽しさがわかりません。 それでもお客様にはご旅行を心をこめてご案内しています。これはGJの上司には秘密にしてもらっています。 唯一知ってるのは先輩の横沢(よこさわ)かみえさんです。  彼女はGJの鏡です。 お客様のご要望、お気持ち、金額的のことすべてを組み込んで旅行プランを立てます。 横沢さんのお勧めにそって旅行をされたお客様は必ず感謝のお気持ちをお伝えにやってこられらのです。 穏やかな表情を浮かべ本当に喜んでおられ、旅行を本当に堪能されたんだなとこちらもうれしく且つ羨ましくなるほどです。 私にはまだまだ出来そうもありませんが。
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