71人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
玄関のドアノブを回す。
錆びた音を追いかけるように、喘ぎ声が大きく耳に届く。
僕は、無言でドアを力一杯閉める。
ドン!
大きな音が響き、奥の行為が一瞬止まった。
「真央か? お前も早くこっちに来い!」
苛立ちと昂揚が綯交ぜになった毒の言葉を、僕に向ける。
「さっさと来い。さっきのことは大目に見てやる」
「うるさい!」
僕は、薄暗いままの部屋で声を張った。
「出て行けよ!
あんたのせいで、僕やママがどれだけ苦労したか分かってんの?」
「何? 生意気な口を利きやがって。誰のおかげで」
「少なくともこの3年間、あんたのお陰で飯を食って来た訳じゃないよ!
ママは、何で別れないの?
僕とこの男、どっちが大切なの?」
ママは無言のままだった。
都合が悪いとだんまりを決め込む、彼女の常套手段。
最初のコメントを投稿しよう!