05.call my name

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でもね、ママ。僕はあなたを見て分かってしまったんだ。 時間なんて、何も解決してくれないんだよ。 そんなの無駄な延命処置なんだって。 いつかは決断しなきゃいけないんだ。 僕達にとっては、それは今日なんだよ! 「そんなこと言うなら、お前出ていけ! 高校生が1人で生きていける程、世の中甘くねぇぞ!」 「言われなくてもそうします。 ママは、やっぱり別れる気がないんだね。それが答え?」 「……ごめんね。真央……」 「分かった。良いよ、これですっきりしたから。 だから2人共嫌いだ! あんたも! あんたを選ぶママも!」 「3年……。3年見ないうちに随分と変わったもんだな。 さっきも、別人(・・)みたいだった」 「カズキ(・・・)はもう()ばない(・・・)! あんたには自分の言葉で伝えるんだ。さようなら!」 僕は、一番大きなリュックに着替えや日用品を詰め込んだ。 スマホもないから、充電器やアクセサリーもない。 身軽なものだ、僕の16年間の人生の持ち物なんて。 「高校ももう通わないから、退学手続き、好きにしておいて」 いつでもやり直せる。 住み込みの仕事だって探せるし、通信の高校や大検だってある。 海外へ行くのも悪くない。 そう、いつでもやり直せるんだ。 カズキの名を呼ばなくても、あいつらと向き合えたんだから。 カズキが僕の『心のドア』を開けることはもうないだろう。 それはそれで、ちょっぴり寂しい気がした。 僕の人生の半分を共に生きてくれたカズキ。
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