02.coming of summer

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世間は夏休みか。 本来なら、部活や受験で忙しいはずだが、青春は一度しかない。 勿論、子供時代(ガキのころ)だって一度しかないし、 おっさんになったらなったで、その社畜人生は一度しかないんだろうけど。 マオは、いじめを耐えて、中学校を卒業して、公立高校に入学した。 だけど、あの性格では、高校デビューもできなかった。 中学のように陰湿ないじめはないようだけど、それも夏休み明けには変わってるかも知れない。 まぁ俺の出番がないことは良い事だよな。 マオが中学の時は、よく助けてやったもんだ。 早く、彼氏でも作ってくれたら、俺も気が楽なんだけどな。 そしたら、ようやく離れられる。 「よう、高田、久しぶりだな? ってシカトかよ!」 俺の知り合いか?全然覚えてねぇ。 覚えてねぇから素通りしてやった。 「何あいつ? 知り合い?」 「同中(おなちゅう)なんだけどさ。 メンヘラっていうか、急にキレたりするんだよな」 「ちょっ、おま、そんな危ない奴に声かけんなよ」 「ごめん、夏だし」 「意味わかんねー。けど声かけたくなる理由は察したわ。ハハハ」 素通りしたけど、笑い声が聞こえるから、まぁ何とかなったんだろ。 マオもこの位、上手く立ち回れれば良いんだけどな。 すぐにネガティブに考えてしまうからな。 そう言えば、親父が帰って来るから憂鬱だって言ってたな。 また、何かしようとしたら、俺が助けてやらないと。 だけど、そう言うとマオは、悲しい顔をするんだよな。 だったら、自分の言葉で『嫌だ』って伝えれば良いんだし、 その場で俺を呼んでくれれば良いんだけどな。 それが出来るような器用さがないからな、マオは。 梅雨が明けたのは良いけど、暑すぎるな。 都会のビル風は熱風で、全然爽やかじゃない。 海か、涼しい高原にでも誘ってみるかな。 coming of summerーー 今年も夏がはじまる。
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