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05.call my name
カズキは、僕の不貞行為に気づいているだろうか?
不貞とは違うか。別にカズキと付き合っている訳ではないから。
でもGW後、急に部活に通うことを止め、話題にも出さなくなったから、何か想うとこはあるはずだ。
だけど、僕は彼を呼んで、知っているかを聞き出す勇気がない。
自分の名前さえ呼べないんだから、彼の名前なんて呼んじゃいけない。
なのに、結局、今夜も頼ってしまった……。
公園でカズキに頭を撫でられながら、彼と月を見比べる。
今夜は三日月。
冷たい微笑みのような三日月。
凍えたナイフのような三日月。
冷たい微笑みのような三日月は、あいつの歪んだ表情を想い出させる。
凍えたナイフのような三日月を、あいつの心臓に突き立てたいと願う。
「月に祈る」
突然、カズキが言った。
「いつか、お前が俺の名を呼ばなくなる日が来るように、月に祈る」
自然と恋人繋ぎの様に強く手を結んだ。
そして、まるで黙祷を捧げるかのように、2人は目を瞑った。
「僕、家に戻るよ。そして自分の口ではっきりと言う」
その宣言が、僕にとって、カズキにとって、どういう意味を持つものか2人は理解していた。
「あぁ、頑張れよ」
いつかと同じ笑顔で、カズキは夜に溶けるように消えた。
この輪郭だけは忘れず、覚えていたい。
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