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03.Father return , secret
学校から帰るのが、嫌だった。
今日はあいつが帰って来る日だから。
どうしてママは別れられないんだろうか?
またあの辛い日々が始まるのに。
ママにとっても。僕にとっても。
運動もできないし、協調性がないから、僕は帰宅部だった。
朝の通学では、なるべく地元の同級生と顔を合わせたくないから、遠い高校を選んだ。
少なくとも、朝に遭遇する機会は減ったが、帰りに鉢合わせすることもある。
重い足取りで自宅のアパートに戻った。
施錠されていない玄関を開くと、3年前の記憶の中と同じ男物の靴が脱ぎ散らかされている。
「真央、帰ったのか?」
声を聞いただけで、躰の芯からビクンと震える。
「返事位しろよ。お父さんが帰って来たんだぞ。
お前の教育がなってないんだな! 2人共再教育だな」
「ごめんなさい……ほら、真央も謝って」
虚ろな母の目。
何時に帰って来たのか知らないけど、狭いアパートにはあの生々しい嫌な匂いが充満している。
「大きくなったな。もう3年だもんな。ちょっと並んでみろ」
僕とママは、あいつに言われるままに整列した。
小柄なママは152㎝と聞いたことがある。
今ではもっと縮んでいる気がするけど。
僕は中学2年生のうちに追い越して、今では160cmある。
「ほぉ、やっぱり今時の子供は成長が早いな」
生唾を呑む、あいつのいやらしい視線を感じる。
頼むから、目を閉じてくれ。
実の娘をそんな目で見るな!
「今日から親子3人水入らず。一家団欒だ。楽しみだな、真央」
気安く、僕の名前を呼ばないで!
助けて、カズキ。お願い……。
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