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「もう結構です。ひとまずはこの話はあとにしましょう。……近くに人間以外の生命反応を感じます」
レイナは研究室の外を見据えて一段と低い声で告げた。
「犬か何かじゃないの?」
「呑気ですね。ここは人類が開発した新たな惑星。人間以外の生物はいないと証明されたではないですか」
「そうだけど、一応家畜とかは地球から連れてきたものがいるし……」
今や人類の約三割が生息するこの星は、数年前に開発された人工の惑星だ。そしてここは小さな惑星の小さな研究所。小規模とはいえ、研究員はそこそこ導入されているし、設備だって十分すぎるほど整っている。僕が言ったように、元々生物がいないこの星にも、地球からそのまま連れてきた生物は存在する。
「あぁ、もう!戦闘態勢にはいってください!死にたいんですか⁉」
「う、うん、分かったよ……!」
レイナに叱咤され、僕は慌てて引き出しから電光銃を取り出す。白を基調としたそれは、よく手に馴染む。
レイナはロッカーに入っていたサーベルを取り出してそれを起動する。バチバチと青緑の稲妻が散り、薄暗い研究室にぼんやりと光を放った。
「……言っておきますけど、私の感知能力は何よりも精密です。この生体反応は、人間の管理下にあるものではありません」
「分かってる。定期的に襲ってくる奴らだろう?」
「……分かってるなら最初からとぼけないでください」
「いや~ごめんごめん」
頬を膨らませた彼女に謝罪すれば、硬い拳が鳩尾に入る。ぐえっと情けない声を零せば、レイナはスタスタと研究室を出て行ってしまった。
苦笑しながら小さく息を吐き、僕は彼女を追って小さな研究室を飛び出した。
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