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「座敷わらし?」
「そうだ」
男はにこにこと俺を見ている。座敷が苗字でわらしが名前じゃないよな? キラキラネーム全盛時代でもまさかそれはないだろう。
俺は体を起こして男の手を肩から外させた。やけに冷たい。それになんだか頼りない感じがする。存在感が希薄と言うか、幽霊と言われても納得するような。
「本当に忘れたのか? いつも一緒に遊んだのに」
「え?」
「それにおやつをよく分けてくれただろう?」
「おやつ?」
「ぱちぱちキャンディとかぽりぽりラムネとか」
子供の頃、好きだった駄菓子だ。
「えーと、あんたはここに住んでるのか?」
「当り前だろう。座敷わらしなんだから」
しごく当然と言った態度で肯定された。
…ちょっと頭の具合が悪いのかもしれない。
端正な顔で目には理知的な光があるけれど言ってることは滅茶苦茶だ。
それにしても雨戸も閉めきりの家で、どうやって生活してたんだ?
「大体、座敷わらしって子供だろ?」
「そうだ」
「あんたは大人じゃん」
「それは仕方ない。敏明が俺を見つけたからこんなに育ってしまった」
「俺が見つけた?」
…だいぶ具合が悪いのかもしれない。
自分を座敷わらしと思いこむなんて。
祖母ちゃんはこいつの面倒を見てたのか?
「えーと。病院とか行ってる?」
「笑子さんのこと?」
笑子は祖母の名前だ。
やっぱり祖母ちゃんの知り合いらしい。
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