ルダス

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タクシーが止まるのを見るやいなや漆黒のスーツが板に付いている男が駆け寄ってくる。タクシーの扉を開き中の男へ手を差し伸べる。そのスムーズな一連の動作に降車するだけでも優雅な美しさを感じさせる。 「(しょう)すまない、若手が勝手に通したらしくて」 男は冷静な表情で声色も落ち着いてはいるものの、僅かに揺らした瞳で現状の深刻さが伝わってくる。 すると(しょう)と呼ばれた男、煌びやかに発光するネオンの元でより一層の輝きを纏わせている彼は、黒服の男の肩を2度ほど叩くと戻す間際、微笑みをたたえた口元にすっと指を1本添えつついつの間に脱がれたのか上に羽織られた1枚を黒服の男の陰で必死に頭を下げているスーツに着られた男に放って、颯爽と派手な装いの店に入って行った。 案の定、店の中はてんやわんやな状態で黒いスーツと派手な装いの男達で入り乱れている。 そんな中を気にもとめずに(しょう)が軽やかに通り過ぎるとそこら中で(しょう)さん!(しょう)さんが来てくれたぞ!良かった――。と歓喜と安堵の声が聞こえてくる。 背中越しに軽く手をちらつかせると高級な時計がキラリと光る。そんな(しょう)の姿を後にして溜息を漏らす者、また座り込んでしまう者までいた。 殺風景な裏側から眩しい程に輝く世界へ(しょう)は何一つ感情の起伏がないまま通り過ぎていく。
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