夏、前兆

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夏、前兆

夏、クーラーの効いた人工的な冷たさがひろがる部屋の中で、怯えている青年が一人。 自分の運命の相手が見つかったことに喜ぶでもなく、ひたすら怯えている。 郡山愛(こおりやま ちか)は、〈アイス〉である。純白とも言える白い肌に白い髪、異常に低い体温。アイスの特徴そのものだ。 アイスである愛が怯えている理由は一つ。 愛の通っている高校に転入してきた生徒、 入野勇樹(いりの ゆうき)が〈ジュース〉であったこと。 人口の約3%ずつしか居ないと言われているアイスとジュースが出会うなど、運命としか言い様がない。そして、その運命こそ、死を恐れる愛にとって一番の悪夢だった。 入野勇樹をジュースだと感じ取った瞬間、ついに自分の番が回ってきたのだと、一瞬で血の気が引いていく気がした。死んだ父がアイスで、形見に僕を残していったと母から聞いた僕は、アイスはこの運命に逆らえないと知った。しかし、僕はそれでもこの運命に逆らいたい。僕にはもっとやりたいことがある。 (僕は...!絶対にジュースに恋なんかしない...!)
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