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夏、思い出
時間は少し遡り、郡山愛が入野勇樹と出会うまでの話。
ごく一般的な母子家庭に産まれ、ごく平凡に育てられてきた。違う所と言えば、父がアイスだったこと。
そして、その父が形見に残したのがアイスの僕だったこと。
たったそれだけなのだが、周りの人間との深い溝を作るには十分過ぎた。
幼稚園のとき、自分はただ周りの子と色の違うだけの子なのだと思っていた。
皆が少しよそよそしいのもそんなものなのだと思っていたし、将来何にだってなれると思っていた。
「愛ちゃんとは遊ぶなってママが言ってたから、もう遊ばないよ!」
そんな言葉がきっかけだった気がする。
その言葉に同調する様に僕は孤立して行った。
小学校では避けられ無視され、話しかければ呪われると噂された。
中学校ではいつか死ぬんだからと馬鹿にされ、同情された。
「怖いよねー!」
「30歳までに死ぬんだって!」
「あいつ冷たいよな!」
「死人みてぇ」
「もう死んでんじゃね?」
そんな言葉ばかりが僕の耳に入って来るようになった。
アイスはその将来性の無さから、入学を受け付ける学校が少なく、会社に就職出来る可能性もかなり低い。
僕の周りの高校も案の定アイスの入学を受け付けておらず、電車で1時間半程離れた高校に通っている。県で唯一のアイス受け入れ高校だ。学力も高くなく、所謂おちこぼれ高校だった。
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