夏、思い出

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「俺はな、幼い頃から背が低かった。ずっと背が低くて、そんな俺がバスケプレーヤーになるといった時は皆から笑われた。お前に出来るわけがない、やった所で無駄だって何度も言われた。でもな、両親だけはやりたいことをしろと言ってくれた。その言葉が凄く嬉しかった。でもバスケの世界は身長が大きく関わる。そんな中で俺は身長の高くてバスケの上手い奴に勝たなきゃならなかった。だから俺は背が低くてバスケのスーパー上手い奴にならなきゃいけなかった。」 先輩はそう言うが、世の中そんなことそう簡単に起こるわけが無い。実力以外に運も必要だ。 「でも!先輩。そんなこと...普通はありえないです。失礼ですけど...運も必要じゃないですか」 「そうだ。普通はありえない。今考えると、俺は幸運なんだと思う。でも世の中お前の言うように運のないやつだっている。そんな運のないやつは誰かに助けて貰わなきゃならねぇ。もちろん、助けてくれる人に出会えるかどうかも運だけどな。でもお前は、俺と出会った。バスケ以外になんの取り柄もねぇ俺だけどな、一人で泣いてる後輩に助言の一つや2つは出来るんだよ。お前今、助けてって顔に書いてるんだよ」 先輩も皆と同じように哀れんで見るか、物珍しく見るかだと思っていた。 そんな予想を180度覆し、優しい目を向けてくれるだけではなく、こんな優しい言葉までかけてくれた。 母以外からこんな優しい眼差しで話かけられたのはいつぶりだろうか。 その懐かしさに、涙が止まらなくなっていた。 ありがとうございますと泣きながら小さく呟くと、頭に手を乗せて 「おう」 と一言。 この先輩との出会いのお陰で、僕は人生を諦めるのを辞めた。 沢山勉強をして、アイスの運命に逆らって生きると決めた。
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