繋がる想い

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繋がる想い

私は幼い。そこら辺の人よりも随分長く生きているのに、幼稚だ。 だから、ちょっとしたことで部屋を飛び出した。 別に、あいつが青梅とこっそり内緒の話をしていようが私には関係ない。 私にだって隠している気持ちがあるのに。 全く、不用心にも程がある。夜は危ないから一人で出歩かない方が良いというのは、当たり前の話だ。 大きな街には、色々な人がいる。 「お一人ですか?」 見た目の派手さからは想像もできないほど丁寧な口調で話す知らない男。 「どうでしょう、お食事にでも行きましょうよ。素敵なお店を知ってますよ」 好青年を振る舞うが、細かな所作からその本性は透けて見える。 「もしかして、彼氏さんがいらっしゃる?」 殴りそうになった。 どこの誰かも知らない奴に構えるほど、今の私にの余裕は無い。 「今そういう気分じゃないの。どっかいって」 軽率な発言だったが、そちらに回せる分が残っていないくらい気が立っていた。 「っ!」 左手首に激痛が走る。 男は、笑みを浮かべたまま、ぐっと力を込める。 「触んないで」 振りほどこうとしても、ピクリともしない。 どれだけ睨みつけようと、笑顔は剥がれない。 「悪いようにはしないから」 「⋯⋯っ、」 骨が砕けそうな痛みに、声を上げそうになる。 「ちょっと、何してるんですか」 後悔に押しつぶされながら諦めようとしていたとき、その声は後ろから聞こえてきた。 「おや、知り合い⋯⋯弟かい?お姉さんの恋路を邪魔しちゃいけないよ」 やっぱり殴りたい。しかし年下だと見破ったことは素直に感心だ。 「弟じゃありません」 南武の口から出たのは、予想だにしない言葉だった。 「僕の恋人に何してるのかって言ったんですよ」 「!」 私の顔など一切気にせず、南武は男の手を振りほどく。 「ちっ、おてつきか」 男は、つまらなそうな顔をしながらその場を立ち去る。 穢れを知らないウブな乙女を手折るのが趣味なのか。 「見失ったときは焦ったけど⋯⋯見つかって良かったです」 「⋯⋯」 「大丈夫ですか、痕が出来てるけど⋯⋯」 「大丈夫じゃない」 ぷいっと、可愛くないわがままを言う。 「恋人のフリするならちゃんと繋いでてよ」 「あ、確かに、嘘がバレても面倒くさいですしそうしましょうか」 嘘。そんなこと、知ってる。 でも、何だか胸が痛くなる。 触れた手は暖かいのに、その熱を受け取れない気がした。 「⋯⋯青梅と話してたこと、教えましょうか?」 不機嫌そうな様子を見てか、南武はそう言った。 「教えていいの」 「大したことじゃないですし」 「なに」 「⋯⋯相談です。家族のように大切な人に、恋をしてるみたいだって」 そう言うと、手を取って歩き出す。 転びそうになったが、何とかついて行く。 「誰のこと」 「さあ、誰でしょうねえ」 「ねえ青梅、南武が言ってた、家族のように大切な人って誰かな」 そう尋ねると、青梅の目は全力で「お前だよ」と主張する。しているように感じた。 「⋯⋯ふふっ」 思わず零した笑みから、青梅も何となく察したようで、やれやれとため息をついた。 「妾はこれから二人分の惚気を聞かなければならんのか」 「だってそこに青梅がいるんだもん」 「何で!?いるだけだろ!?」 「いーでしょ」 手に持ったストローでカフェオレをかき混ぜる。 一口飲んでみると、甘くて美味しかった。
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