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とある国王の城、北東の塔最上階。
部屋の中央にあるベッドの上では出産の最中にある女性が必死に声を押し殺していた。
その足元に産婆が一人。
そして扉の所に杖をついた老人が一人。外の気配を伺っている。
「グレイス様もう少しです! 息んで下さい!」
グレイスは歯を食いしばり息むと、薄暗い、部屋の中に赤子の鳴き声が響き渡る。
産婆がへその緒を切り、赤子を乳母湯につける。
杖をついた老人もグレイスの元へと駆け寄る。
「グレイス殿。良く頑張りました」
グレイスは老人に笑顔を向けようとするも、どうしてもその表情から不安を消し去る事は出来なかった。
グレイスは疲れた体にムチを打ち、上半身を起こそうとする。それを老人は支える。
「それでどっちなの? 男の子? 女の子?」
産婆が赤子を産着に包み、グレイスの元へと戻って来る。
「元気な男の子です」
産婆は出来る限りの笑顔を見せ、グレイスに赤子を抱かせてやった。
「そう……男の子なのね」
そう言いながらも慈しみに満ちた顔でグレイスは赤子を抱き締めた。
扉の外から階段を駆け上がる複数の足音が聞こえてくる。
その足音は三人を凍りつかせる。
慌てて産婆は扉を内側から押さえ、老人はひいてあった絨毯を捲くり上げ、脇に退かす。
産婆毎扉は打ち破られ、数人の兵士と綺羅びやかなドレスに身を包んだ女性が部屋の中へと押し入って来た。
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