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アレックス達は馬車に乗って城を目指していた。
暫く揺られていると、にわかに馬車の中が騒がしくなってくる。
「煙だ……煙が上がってるぞ!」
誰かが言ったように城の方角から何本もの黒煙が立ち昇っていた。
「お前等ッ! 直ぐにでも戦える準備をしておけ!」
行者の隣に座った、城の老兵士が馬車の中に向け、怒鳴った。
先程とは打って変わって、馬車の中は水を打った様に静まり返った。
「何だ。全員黙り込んで。ビビッてんのか? 戦う為に志願したんだろうが!」
ギャランが呆れて言う。
「俺は武器を持ってないんだ。家が貧しくて仕方無く……」
いかにも戦いをした事も無さそうな男が呟いた。
「武器なんかその辺に転がってるモンを何でも使え! 大物狙いじゃねぇんだろうが」
ギャランはアレックスの方を見る。
「お前もビビッてんじゃないよな?」
「ビビッてはいないが城下の人達を思うと。今はこうして座ってる事しか出来ないのがもどかしいよ」
ギャランはアレックスの肩を掴む。
「気を付けろ。良い人間は早死するぞ」
アレックスは不器用ながらも彼が示す優しさに触れ、緊張が解けた。
「だったらギャランは相当の悪みたいだな」
そうアレックスに言われると、ギャランの顔に笑顔が忍び寄る。
「あぁ、俺は大悪党さ。相手にとってな」
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