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「いや、構わぬゆえ帳簿の仕事に戻られよ。何、聞くともなしに聞いておったが、拙者も部下とは申せ左衛門の所業には頭を痛めておったところじゃ。何か戒めを与えてやれるとよいのだが……」
何時の世にも、中間管理職ってなぁ部下に頭を悩ますもののようで……思わず溜息を吐きますな。
「何か、これという『弱み』でもあれば、そこから何か考えられるというものじゃがの」
「お奉行様、それは難しい話でございますな。左衛門殿は性格こそアレでござるが、仕事に手違いはござらん。せいぜい『甘い物に目がない』という程度でござろうか」
「……『甘いもの』か。そう言えば明日、公家から客人があると聞いておったが……確か、大宮様であったな」
お奉行様、何か閃いたようで、ポンと手を叩きますと。
「誰か、誰かおらぬか。済まぬが門前町の寅吉屋まで使いに行って欲しいのだが」
「寅吉屋でございますか? ああ、あそこのドラ焼きは名物にござれば拙者もよく存じております。当家の者に言い伝えて揃えて参りましょう」
「そうか、相済まぬがよろしく頼む。そうだな……数は、8個あればよい。」
えー……こうして、お奉行様の部下が『寅吉屋のドラ焼き』を8個買って参りました。
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