落語 はらきり

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「こ、これはしたり! されど、斯様な理由であれば8個も要りますまい。せいぜい3つもあれば……」 「愚か者が! 大宮様は験を担ぐので有名な方なのじゃ。そもそも『おやつ』とは『八つ時(2時半くらい)』に食すものの意じゃ。『八』と言えば末広がり、縁起が良い数字でござろうが! それを『七つ』で出せると思うか!」 「むむ……し、しかしながら拙者はそのような事情を知る由もなく……」 「言い訳は聞けぬ! 何も聞かず勝手な事をして申立が通ると思うか! 大事なお客人のもてなしにケチを付けた罪は重いぞ! 謝罪会見で『中の白餡はオフホワイトでした』で済む問題ではない!」 「ぐっ……されば、拙者に『責任をとれ』と申されましょうか?」 「当然であろうな」 「しょ、承知致した。痩せても枯れてもこの左衛門も武士の端くれにございますれば。『責任をとれ』と申されるのであろうなら、『腹を切って詫びよう』かと存じますが如何か!」 いつものクセと申しましょうか。 『たかがドラ焼き1個で』とタカを括っておりました左衛門さん、ついは『腹を切る』と言ってしまいましたな。 そこまで言えば『たかがドラ焼き、そこまでするには値せん』と許して貰えるだろうと……しかし。 「左様か。うむ、見上げた根性である。では拙者が立ち会うゆえ、腹を切ってみせるがよい」 と、お奉行様が受けちゃいまして。 「え?腹を……ですか?」 「何を申しておる。そなたが自分で言い出したのだぞ? さぁ如何した」
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