落語 はらきり

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えー……くだらない所で一席お付き合いを頂きたいと思いますが…… まぁ、どんな所にも「嫌われ者」なんてぇ人がおりますわな。 独善的で、他人の事なんざぁ知ったこっちゃないとばかりに「お前ら全員クビにしてやる力がある」だのと言い出す、心の痛いタイプとか。 その中でも、何かというとすぐに騒ぎ立てるヤツ。こいつぁ嫌われるわけで…… 「いやいや、まったく左衛門殿には困ったものでござるな」 「ああ、その通りでござる。つい先日も廊下を歩いておったら、よそ見をしている左衛門殿と肩が触れ申してな。『危のうござるぞ』と注意致したら、『そっちが気をつけるべきである』と激高いたしてのぉ」 「そうそう、どうも彼の者は短気で困る」 「挙げ句の果に『そこまで言うなら腹を切ってしんぜよう』とまで言い出す始末。左衛門殿の常套句とは言え、まったく以て困ったものじゃ」 「うーむ、それはいかんな」 「遺憾であろう?」 「うむ。いっそ止めずに切らせておけば、今頃は静かになったやもしれぬと思うと少々に残念でござるな」 「戯言事を申すでないわ。その場におったら要らぬ責任を被せられるでな。切るなら切るで、他人の迷惑にならぬようしてもらわねば……」 「……こらこら、その方達。仕事の手が止まっておるぞ?」 「おっと、これはお奉行様。失礼を致しておりました」
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