招待

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不死の国。 大学時代の教授はそう言っていた。 この国の技術は2040年代頃から急激な成長を遂げたらしい。 車の自動運転、AIによる会社経営、クローンの誕生。 人間が生み出した人間じゃないものによって人間の存在価値が薄れていくような感覚がした、と教授だけに限らず当時の高度成長期を生きた人間は口を揃えてそう言う。 右目の無い純人間の教授は、自らが人間である事を忘れないように戒めとして右目を切除し、玄関先にその目玉を置き自分を監視させていると言っていた。 果たしてそこまでする必要はあったのだろうか。 それをする事により効果はあったのか。 ただ、一つ言えることは、当時の人間はまだ純粋な人間でいたいと思えていたこと。 国が変わるにつれてその考え方すらも変わってしまったということ。 何が言いたいのかと言うと、昔の国のまま、昔の考え方のままだったなら死にたいと考える人間はもっと少なかったはずで、 純人間に死にたいと思わせているのはこの国だということ。 この国は技術が発達しすぎたのだ。 '60歳まで絶対に生きられる不死の国。' 言い換えるなら '60歳まで絶対に死ぬことができない牢獄の国。' これが本当に正しいのか正しくないのかそんな事は一人間が考えたところでわかるわけがない。 だが、ちゃんとした思考のある人間なら殆どがこう思うだろう。 早く死にたい。 死なせてくれ。 と。 僕も同じだ。
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