対立

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対立

「大宮さん、こっち!」 立ち竦んでいる大宮の腕を咄嗟に掴み、迫り来る京極から逃げるように部屋に入った。 「おい待てやお前。」 チップを連打し急いで扉を閉める。 京極が走って突っ込もうとした瞬間にようやく扉は閉まってくれた。 閉まった瞬間に、 ドゴン。 と京極が扉にぶつかる。 まさに間一髪。 間違いなく京極は僕達を殺すつもりだった。 「開けろくそが、調子のんなや。インキャが。」 「開けたら僕たちを脱落させますよね。?」 「お前俺に口聞けたんやな、殺してやるから開けろ言うてんねん。」 外から扉を叩く京極。 徐々に乱暴になっている。 「殺されるということは生かされるということですよね。」 「どっちでもええやろが、さっさと開けろやクソが。会議せんでええんか?」 「この扉越しで会議をさせてください。」 「お前ほんまだるいな、河原とかいうやつよりお前が殺されるべきやったな。」 ゴン! と扉が大きく音を立てる。 扉の向こうは見えないが、京極の怒り狂った表情が目に浮かぶ。 この扉は絶対に開けてはいけない。 殺されて、また生きなければならなくなる。 「ちゃんと話し合いで決まるまでこの扉は開けません。」 「俺はお前みたいなやつが一番嫌いやねん。社会のゴミや。お前みたいなやつがおるから社会が腐んねん。」 「僕はあなたの方が社会のゴミだと思います。」 「おーおー、よーいうやんけ。ほんなら百歩譲ってそうやとすんなら俺が死ぬべきやんな?。」 「いいえ、死なずにケイムショに入るべきです。」 「てめえ!さっさと出て来いや!ぶち殺してやるわゴラ!」 ゴンゴンと扉が何度も鈍い音を立てる。 ビクともしない扉に僕は安心していた。理不尽な社会と僕の間にも、こういう壁があればよかったのに。 人と関わらずに済む世界だったらよかったのに。 「僕は!」 「あ?!なんやねん!」 「僕は、死にたいんです。」 「俺もやボケ!!」 「あなたより!」 「んなわけあるか!いじめられたくらいで死にたいとか抜かすなボケ!生きろや!」 「勝手に理由を決めつけないでください!」 僕は何故こんなにも声を荒げてしまっているのだろうか。 僕はこんなにも声を荒げることができる人間だったのか。 僕はこんなにも死を求めていたのか。 いつもなら俯瞰的に自分を見れば冷静になれるはずなのに、いつの間にかそれができなくなっていた。 本当に死を求めているのだ。 本当に死にたいんだ。 '不死の国' こんなもの嬉しくともなんともない。 さっさと崩れてしまえばいい。 やっと死ねると思って来たのに、また人に邪魔されてる。 だから人と同じ空間に生きるのは嫌なんだ。 '人との関わりが自分を生かします。' 大学2年の夏、冷たい講義の中、首を絞め合う友人の隣で聞いた教授の言葉。 妙に納得して、首に刺そうとしていたボールペンでメモをした。 足りない頭で必死で考えところで意味なんて全く分からなかったのに。 死にたがっていた友人も首に手形を残したまま、黙って教授の話を聞き始めていた。 今思えばあれは洗脳だったのかもしれない。 死にたいと思う僕達の気持ちを曖昧にさせる不思議な言葉だった。 三年後の今まさにその言葉を具現化した状況がやってこようとはあの時は思いもしなかった。
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