40人が本棚に入れています
本棚に追加
/358ページ
3 ……やっぱり(優しい)オオカミでした。
side正冬
……また、研究室にこもりきり生活に逆戻りだ。
ちーちゃんは陰陽師の大家、影小路本家の二女。
俺は神祇宗家のうちの一つ、大神家の長男だけど、勘当された身。
正直、壁はたくさんある。
ちーちゃんはもう家の仕事もしていて、俺は大学生で研究詰めの毎日。告白をした日以来、まともに逢えていない。
連絡は毎日取っているけど、時間がなかなか合わない。遅れて返事をすることの方が多い……。
自分の不甲斐無さに呆れて、所属する研究室で研究経過を書いているノートを前に、ため息をついたとき。
「大神―、お客さんー」
「あ、おう」
廊下から同輩に呼ばれて、顔をあげた。
お客さん? 珍しいな。……まさかちーちゃん?
そんな想像に自分でドキッとしてしまった。
ちーちゃんと出逢ったのがこの大学だから、訊ねてくることがあっても不思議ではない。
……が、呼ばれた先にいたのは男が二人だった。
研究生たち――特に女子――が、ほかの研究室の窓から覗き見ている。
……あんまり近づきたくないくらい目立つ二人だな。
最初のコメントを投稿しよう!