聞かれる女

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聞かれる女

中野と同時に総務に入ってきた谷川さんは、第一印象の良いタイプだ。 常に少し、感じ良く微笑んでいるような彼女は、例えるなら“人に道を聞かれるタイプ” ビルの総合受付にいる彼女は、言わば会社の顔だ。彼女の対応次第で、時には会社の評判も変わる。 彼女は申し分無く会社に貢献してくれている。 ただ…… 「あの受付のお嬢さんは、ご結婚なさってるのかしら」 年輩の女性からの問い合わせが多い。俺を通せば、堅苦しいものになるだろうし、恋愛くらいは自由に。 それに、彼女は相手に不自由していないだろう。 ────数年後 一緒にいる二人を見かけた。同期で同じ総務だしな。中野と谷川さん。 中野が珍しく苛立ちを顔に出す。……仲が悪いのかと思ったが、中野は彼女の手を取ると、自分の腕を持たせた。 ああ、そういうこと。ちょっと意外だったけれど まあ中野はなんだかんだうまいんだよな。 「谷川さんって、ほんと感じがいいのよね、えっと、案外あれだけれど」 綾が言った。 「あれって何だよ」 「綾さん! いいんですって! 」 中野が慌てて止めた。顔が赤い。 「案外ね、肉食なのかもしれませんね、可愛らしい見た目なのに……」 宮が楽しそうに言って、中野が宮を睨んだ。 なるほど、案外……こっちが食われてんのかもな。
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