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唯一の救い。
彼の事をそう思っていたけれど、唯一ではなかった。もう一つ、救いの手が差し伸ばされた。
「ちょっと、いい?」
社長に呼ばれ、社長室に入る。社長と向かい合って座ると、彼は言った。
「手に追えない」額に手を置いて、ため息を吐きながらそう言う。
白髪混じりの髪、力なく紡がれる言葉に、会社がまずいのだと悟る。
それは、そうだろう。お金を作ってくる営業がああなのだから。それを分かっていて、“その話”を私にする。営業が無能だと言っているようなもんだ。
反対に、私の事は評価してくれている……
分かってくれているのだ。会社のピンチだというのに、そこに少しばかり嬉しさを覚えた。
だけど、思っていたよりピンチではなさそうだ。すぐさま、どうこうなるレベルではないのだろう。社長の次の言葉でそう思った。
「テコ入れしようと思ってるんだ。それを、外部の人間に頼もうと思っている」
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