第1話

5/6
前へ
/103ページ
次へ
ああ、それは賢明だ。社長はさすが、社長職だなと思った。ここまでになると、そうした方がいい。外部に入って貰う方がいい。馴れ合いになった、この状況下では。 状況を把握し、何をすべきか……。 ただ、ちょっと行動が遅い、とは思うけれど、抱えるものが多すぎたのだろう。出来る人というのは、そうなのかもしれない。 下が育たない。良きアドバイザーでもいれば……もっと成長するのだろう。 そこに気づく社長だ。きっと、大丈夫だ。 「ええ。よろしいかと存じます。力不足で申し訳ありません」 正直、はいはいと何でも受けてた私も悪い。なまじっか、出来てしまうから。あの人達より。 そうやって、下に見ていることが、相手にも伝わりこの結果を招いたかもしれない。 私には昔から、分析するクセに、自分の中でだけで終わらせてしまう癖があった。 この会社で言えば……アウトプットする相手が居なかったというべきかもしれない。 「出来る奴は、自分でやった方が早いって思ってしまうんだよね。君の気持ち、分かるよ」 そう言って笑う社長の目は、まだ諦めていなかった。 「微力ながら……私も……」 そう言い掛けた時、部屋をノックする音が聞こえた。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3543人が本棚に入れています
本棚に追加