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見る男
──その年、宮は自分の下に一人の男を入れた。
時々、馬鹿なのかと思わせるこの男は
時々、天才なのかとも思わせた。
宮の体調の事も、宮に想いを寄せる同期の事も、思えば誰より早く見抜いていた。普段はすっとぼけた、デリカシーのない男(綾談)らしいが
ここぞと言うとポイントは押さえてる。それは、結局……あの鋭い目で人をよく見てるってことだ。
まだまだ粗削りではあるが、しっかりと見ている。
それに、なんだかんだ人当たりも良くて、うまいやつだ。
この中野という男は、宮が上司に当たるわけだが宮の事が好きなのだろう。
崇拝というのではなく、面倒を見てやらないと駄目だと思っているに近い。
良くも悪くも、それは正解で、宮は時々人にそう思わせる部分も持ち合わせている。
寛大で人一倍感受性が強く、鋭い。そんな宮の弱さに気付けるのだから、この男は本当に宮をよく見ている。
まだまだ、未知数な男なのだ。
それにしても……なんだかんだ、うまいよ、こいつ。
「中野くんってほんと、うまいわよね。……顔はイケメンだけど」
……さすが、綾。
「だけどって何すか」
中野が不服そうに言った。
「はは、うん、イケメン、イケメン」
宮がからかってそう言った。宮もこんな中野が可愛くて仕方がないのだろう。
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