見つめる女

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見つめる女

最初は俺を見てんのかな?なんて思った。 俺はこんな見た目だし、じろじろ見るやつはじろじろ見る。 中野の同期で、営業に配属されたアイドルみたい顔の相原るなは、総務へ来ると必ずこちらへ視線を投げる。 といっても、俺は本来この席ではない。綾の前、宮の横。 ここは空席になっていて、俺はよくここへ来ていた。 気づいたのは、宮が何かしている時はこちらに視線が投げられ、宮が顔を上げると俯く。 試しに俺も俯いたり、顔を上げたりしてみたけれど、俺には無反応。 つまり、この熱すぎる視線は宮だけにに向けられたレーザービーム。 しばらく様子を見ていたが、中野がふっと吹き出し 「はい、何?」 カウンター越しに彼女へと話しかける。 何やらボソボソ話し 「うっさい! 禿げ!」 「禿げてねぇ」 ……意外に口が悪い。 やがて帰って行った彼女の背中を宮が追い、苦笑いする。 なるほど、困ってる、困ってる。 ふーん、想われる方がいいんじゃねえのと思うけれど…… 「宮、お前いくつだ? 」 「31です」 察しのいい中野が聞く前に答えた 「僕の代は25です。6歳差」 「私達と一緒ね」 察しのいい綾もそう答えた。 宮が小さくため息を吐くと 「社長、仕事して下さい」 そう言った。 「るなちゃんって、ほんっといい子なのよ、一途で。可愛いし」 綾がそう言った。 「分かりやすいっすよね」 中野もそう言って…… 「仕事、して下さい」 宮がそう言った。 ────宮と彼女が会社のビルを出るとすぐに手を繋いで歩いているのを見かけたのは それから一年後の事だ。まあ、何だ。彼女の粘り勝ちか?なかなか根性がある。それと、男を見る目と。
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