車の向こう

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 毎日通る道に一台の車が停まっていた。  その車と壁の間から人の頭が覗いている。  でも、車は壁にベタ付けされていて、人が入り込めるような隙間はない。  車内の人が窓を開けて顔を出しているとしても、その隙間すら壁と車の間にはないのだ。  ポスター? あるいは等身大のパネル? いや、あれはどう見ても紙とかそういう物じゃなく、生きた人間だ…あの位置にいる以上、『生きて』いるかどうか、あるいは『人間』かどうかは怪しいけれど、印刷物の類でないことは判る。  色々気になりすぎてずっとそっちを見ていたら、立ってる相手と目が合った。  相手がニヤリと笑う。  どうか、その笑顔が友好的なもので、俺はすんなりとあの車の側を通って前進できますように。 車の向こう…完 
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