ホール、ホールド、オーバーホール

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 とはいうものの、やはり同じクラスになったからには、それなりにかなえとも交流する機会というものはやってきた。  授業のプリントを配るとき、班を作って話し合いをするとき、掃除の時間…その他諸々、そうして自然と一緒に行動をしたり、口をきくシチュエーションがあったからだ。  そういうとき、かなえはごく普通に私へ話しかけてくれた。  私も、内心のドキドキを悟られないよう気を付けながら、返事をした。  そういう私の態度は、緊張もあって、もしかするとぶっきらぼうな感じに取られていたのかもしれない、だから、こういうちょっとした時間にかなえと少し会話をしても、特段盛り上がることもなく、したがって特別の友情が芽生えるわけでもなく、ただの雑談として終わった。  だから、同じクラスになったからといって、私とかなえの小学生時代の関係は、ちょっと顔見知りの同じ小学校の子、から、ただのクラスメイトに変わっただけだった。  そのまま時間は流れていって、やがて卒業式を迎え、私の平凡な小学校生活は箱のフタを閉じるみたいにして、ごく普通に終わっていった。  小学校を卒業することで私が一番残念だったのは、もう近くからかなえを見ていることができないことだった。  かなえとは住む家の地区が離れていたので、中学校は別々のところになるのだ。  ただのクラスメイトである私は、かなえの個人的な連絡先を知らない。  でも、教えてもらったところで、小学校というシステムから離れてしまった今、私などがかなえと、何をきっかけにして、何を話し、どう顔を合わせればいいというのだろう?  私にはそういう未来を、上手く想像することができなかった。  教室という同じ箱のなかで、かなえと同じ時間を過ごしている毎日が、私にとっては宝物だったのだ。  それが終わってしまうことが、どれほど私にとって、それこそ大切にしていた宝箱を失ってしまうくらいに残念なことだなんて、校門の前でいろんなクラスの子たちとワイワイと肩を組んで写真をとっているかなえには、想像もつかないことだけれど。  仕方がない、月日による環境の変化というものに人間は逆らえないのだから、小学生の…いいや、もうすぐ中学生になろうという頃の私にだってそれは分かってはいたから、そっと、ずっと大切にしていたかなえという宝箱のフタを閉じて、手放したのだ、私は。  もう二度と開くことはないつもりで。  これまで私はアイドルグループとかに夢中になったことがないから、はっきりとは分からないけれど、きっと、そういう好きなアイドルの追っかけをもう止めようって、同年代の女の子たちが諦めたときなんかは、このときの私みたいな虚無感を覚えるのだろうと思う。  けれど、結局私は、かなえという私にとっての心のキラキラをまだここで失うわけではなかった。  このあと私たちは、偶然にも再会することになる。      
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