ホール、ホールド、オーバーホール

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 さらに時は流れて、中学生だった私たちは高校受験をしなくてはならないシーズンへと突入した。  どこの高校を受験するかとか、そういった話をもちろん私はかなえとした。  お互い公立が第一志望だったけど、私は県内でもちょっと上くらいのランクの普通校を選択して、かなえは私の希望するところよりもレベルが高い高校を選んだ。  お互いに英語塾の他に、別の科目の勉強のための講習に通ったりして、中学三年生のときは、本当に地獄のように毎日が忙しかった。  それでも、そんな忙しい勉強の日々の合間にも、私とかなえの交換ノートは続いていた。  当時は交換ノートを眺めたり、かなえに宛てて書いていたりするときだけが、ホッと一息つける時間だったような気がする。  うちにいても、私だけじゃなく家族も受験にからんでピリピリしていたし、通っている中学校にも仲のいい子はできていたけれど、みんなそれぞれに必死で、あのころは心が落ち着く暇なんてなかったから。  ただ、週に一度会う、他のどんな関係からも独立していた、私とかなえというふたりだけの関係だけが、私の唯一の心のよりどころだった。  だから私は、この世で私とかなえしか知らない、この交換ノートをひとりで眺めながら思うのだ、中学を卒業して、高校生になったら、もうあの英語塾へ行くことはなくなる、そうしたら別々の高校に通うかなえとは、また距離ができて定期的に会えなくなってしまう…それは、なんてさびしいことなんだろうって。  もう何冊目になったかもわからない、すでにもう表紙がぼろくなってきてしまっている交換ノートをなでながら、私はジッとそれをみつめる。  でも…きっと大丈夫だ。  私はもう、ただ遠くからかなえを見ていただけの、昔のクラスメイトAじゃない、私たちは親友なんだ、だから定期的に会えなくなっても、この交換ノートが続けられなくなってしまっても、これまで通りラインをしたり、休日には二人で会って遊んだりできるはず、だから…大丈夫だ。  あのころ、小さい子供だった私は、公園のブランコの上から一人、楽しそうにみんなで鬼ごっこをしている、笑顔を浮かべたかなえの姿を、ただこうして眺めているだけでいいと思っていたはずだった。  なのにもう、この頃になると、かなえに対して独占欲が生まれていた。  私は、かなえの親友。  親友っていうのは、何人もいない、そう、親友っていうのは、彼氏彼女みたいに、その相手に対して一人しかいないものなんだ。  私は、かなえの親友で居続けたい、だれにもこのポジションを渡したくない。  私はかなえのことを誰よりも知った気でいた、そしてかなえも、私の一番の理解者であってくれてる気がしていた。  どうして、そんなふうに思ってしまっていたんだろう?  
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