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噛み合っていると思い込んでいたものが、まるで歯車のほんの小さなパーツから外れ落ちて、やがてすべてが順番に崩れ去っていくみたいに、壊れていく。
見上げた表示板には、私の受験番号が書かれていた。
苦しい受験勉強の日々が終わり、私は第一志望校に受かったのだ。
そのときの気持ちは、それまで重かった心の中が一気に晴れて、軽やかになっていくようだった。
私と同じくらいナーバスになっていた家族も、すごく喜んでくれて、とても誇らしい気持ちがしたものだった。
そして合格がわかってから、そういう家族とのお祝いムードも一段落したところで、その日の夜、私は自分の部屋のベッドに寝そべりながら、かなえにラインをしてみることにした。
自分の結果報告と、かなえの方はどうだったのかを聞くために。
『私、〇〇高校に受かったよ! かなえの方はどんなかんじ?』そんなふうにラインを送ったら、しばらくして連絡が返ってきた。
ピロッと通知音がして、そこに表示されていたメッセージは『だめだった』。
「え…」
それを見た瞬間、一瞬息がつまった。
かなえは頭がいいから、当たり前のように希望校に受かっているだろうと思い込んでいたからだ。
なんだかこれじゃあ自分自慢してるみたいに伝わっちゃったかな…と、少し不安になっていたら、次にこんなメッセージがかなえから送られてきた。
『だから〇〇高校に行くことになった』と。
かなえは、私の第一志望校をどうやら滑り止めにしていたらしい。
それを知らなかった私は、これからまた同じ学校へ一緒に通えるんだという…また毎日かなえに会えるんだというところにばかり頭がいってしまい、テンションも最高潮で、深く考えもせずにこんな返事をしてしまった。
『ほんと!? それじゃまた一緒の学校になれたんだね!! やったあ!!』
自分の部屋でひとりキャーキャー言いながら、たくさんのスタンプをつけて私はそんなふうにすぐメッセージを送った、でも既読がついても、かなえからの返信はなかなか来なかった。
ただしばらくしてから『うん』とだけ返されただけだった。
それを見て私は、…やっと自分は無神経だったのかもしれないと感じた。
思ってもいなかったこと…またかなえと一緒に毎日を学校で過ごせるという部分にばかり目がいって、第一志望に落ちてしまったかなえの気持ちというものを、私は深く考えていなかったかもしれない、かなえに嫌な思いをさせてしまったかもしれない、そう思って反省した。
でも…。それはそうだけど…と、同時に私はこうも思った。
私はかなえと同じ学校になれてこんなにも嬉しいのに、かなえはそうじゃないの? 私と一緒の学校になったことで、第一志望に落ちてしまったショックがちょっとは緩和されるくらいには、うれしくないの?
もう少しくらい、また春から一緒だね、私も楽しみだよ、とか…そういう感じ、かなえには少しもないの…?
そんなことを考えてしまって、もやもやした。
さっきまで嬉しくてたまらなかったはずなのに、なんだか眠れない夜になってしまった。
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