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黒い噴火
その日は朝から曇り空だった。
この間受けたとある会社の中途採用試験は見事に落ちた。
不合格通知は丸めてゴミ箱に叩き込んだ。またしばらくはあの町工場でアルバイトとして働かねばならない。火花や油や高温や体育会系特有の空気に塗れて働くのははっきり言って楽しくない。
何をするにも金が足りず、休日は常に時間を持て余す。小説でも書いてみようか、なんて考える事もあるが、そもそも本を読まない俺には書きたい事なんて無かった。
街角で無料配布している求人情報誌を取りに行くことに決めた。せめてもう少し楽し気なバイトでも無い物かと考えたからだ。
ほんの駅前までだから。たったの片道十分程度だから。
そう思って、俺は傘を持たずにぼろアパートのドアを開けた。
さびだらけの鉄階段を下りて道路に出る。鉛色の雲は深く垂れ込めていた。やや急ぎ足で俺は歩き始めた。
結論から言えば、それは選択ミスだった。
梅雨というのをまだまだ甘く見ていたのかもしれない。
帰り道、本屋を出るや否や降り始めた雨は瞬く間に強さを増した。俺は慌てて雨宿りの場所を探した。シャッター街になりつつある小さな商店街は、雨宿りの軒先だけなら事欠かない。
適当なシャッターの前の軒先に飛び込む。
傘を持っていない俺をあざ笑うように、雨は徐々にその強さを増していった。
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