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人の気持ちはオセロのように
さて、あとは画面の送信という場所をタップするだけ。それで、私達は終わる。さよなら◯人。お互いに、頑張ろうね。
送信ボタンを押そうとした途端に、◯人からLINEが入った。あまりのタイミングの良さに私の心臓は飛び跳ねた。しかし、彼の方から送られてくるメッセージの内容に、残念ながらそこまで種類はない。
いついつは空いてる? 金貸して。今からホテル行かない? 大抵はこんなどうしようもないことばかり。
まだちゃんと見ていないので内容は分からないけど、チラッと札束の絵文字が見えた。お金を借りようとしているんだろう。呑気な人だ。全く。これから私からどんなメッセージが届くのかも知らずに。
私は別れを告げるメッセージを送る前に、今届いたばかりの彼からの最後のメッセージを見た。それはやたらと、!が使用されたメッセージだった。
『咲! 聞いてくれ! すごいぞ! うちの母さんが当てたんだ!! 年末ジャンボ! 一等を! 10億だぞ!!! お前には今まで散々迷惑かけてきたけど、これできっと俺達幸せになれるよ!子供だって作れるし、幸せな家庭も築ける。LINEで申し訳ないけど、この際だから言うよ。咲、結婚しよう 』
続いて送られてきたのは画像だった。新聞に載っている当選番号と宝くじの番号だった。それは見事、一等に当選していた。
それを見て、私は無意識にスマホを横に振っていた。
2分後、私は◯人に返信をした。親指が送信ボタンに触れる。
私の書いた内容がふきだしの形をした枠の中に入って、送信される。
私はそれを見て、笑いだけが止まらなかった。
『えぇ! もちろん! ◯人、大好き! もう、離さないんだから!』
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