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第三章 う
昼休み、君は、君の親友とお昼ご飯を食べていた。
「やっぱり、ぼっちは嫌だよね」
君が小声で話す声は、僕には鮮明に聞こえていた。
「そうだね〜。君がいなかったら私、ぼっちだもん」
どうやら彼女には、君以外に友達がいないらしい。
「ふふっ、私もぼっちだったよ!」
君も、友達が少ないらしい。
「そうかな〜君は、友達多いでしょ! よくあの人達とも喋ってるし!」
あの人達とはたぶんクラスの人気者達のことだと思う。そう言う彼女に、君はやっぱり、
「私、意外と友達いないんだよ……」
と言った。
「ほら、意外と~とか言う人って、絶対友だち多いじゃん。」
「う~ん、たしかに、君から見たらそうかもしれないけど、そういうイメージだけで決めつけられるのは、ちょっと困るんだよね。あの人達にはたまに話しかけられるだけで、別に仲良くはないし」
と、君は言った。
「そうなんだ」
予想外の返答に、彼女は何も言えなくなったようだった。
「ねぇ、あの子知ってる?」
君は、彼女が返事に困っていることを察したのか、突然、話題を変えた。僕は机に伏せて寝ているフリをしていたせいで、それが誰のことを指しているのかはわからなかったが、唐突な質問に、彼女は驚きを隠せないようだった。
「うん。知ってる。ていうか、小学生の頃から一緒じゃん。全然しゃべってくれないってみんな言ってるよね」
彼女がそう答えると、君は話を続けた。
「そうそう、そうなんだけど、あの子と仲良くなりたいんだよね」
「えっ? あっ……」
彼女は、驚きのあまり何かを地面に落としてしまったようだった。
「そうなんだ。やめたほうがいいと思うよ。全然喋らないから、面白くなさそうだし」
と彼女が言うと君は、ふふっと少し笑いを含ませながら、
「やっぱり、そうだよね〜、ほんとに全然喋ってくれないんだよ。何度も話しかけてはいるんだけどね。」
と言った。彼女は、暗い口調で
「じゃあ、全然楽しくないでしょ? やめたほうがいいよ」
と言った。
「うん。楽しくない。楽しくはないんだけど……たぶんもうすぐ喋ってくれると思うんだよね。だからもうちょっと頑張ってみようかなって」
君はそう言うと、僕の方に近づいてきて僕の名前を呼んだが、僕はこんな話を盗み聞きした後だから、どうすればいいのかわからなくて、しばらく寝ているフリを続けていた。
――気づけば、授業が始まるチャイムが鳴っていた。
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